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最悪の選択が最良の選択になるということ『光をくれた人』

最悪の選択が最良の選択になるということ『光をくれた人』

(C)2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC 子供の授からない夫婦がたまたま流れ着いてきた赤ちゃんを自分の子として育てるという「過ち」を犯すことから、胸の引き裂かれるような悲劇に発展していく本作。 そのまま黙って秘密を墓場まで持っていくという選択肢もあったかと思う。僕もそれでいいん…
ひと夏の輝き『20センチュリー・ウーマン』

ひと夏の輝き『20センチュリー・ウーマン』

(C)2016 MODERN PEOPLE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 1979年、夏。 冒頭の海岸の俯瞰ショットが美しいサンタバーバラ。 のんびりと風が流れるカリフォルニアの地方都市にも、当時隆盛を誇ったパンクの轟音が響き渡っている。 1924年生まれのドロシアは、設計士として自立しているシ…
生きる歓び『パティーとの二十一夜』

生きる歓び『パティーとの二十一夜』

(C) 2015 Arena Films, Pyramide Productions, Canal+ “映画”の範囲内であれば割とどんなものでも好きなので、ジャンルが偏ってしまわないように気をつけて見ている。とはいっても好き嫌いははっきり分かれる。自分が好きになれる映画を見ることのできた帰り道は、足取りは明らかに違う。…
街が泣いてた『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

街が泣いてた『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

(C)2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved. 男は酒場で『酒と泪と男と女』のように振舞っていても、切ないくらいに真面目で不器用、身内と思う人には何を言われてもキレないのに、赤の他人には些細なことでキレる。心を苛んでいるのは罪の意識だが意外にも自覚はない。根無し…
実在の中の不在『パーソナル・ショッパー』

実在の中の不在『パーソナル・ショッパー』

(C) 2016 CG Cinema, Vortex Sutra, Sirena Film, Deltafilm, Arte France Cinema アサイヤスの作品は初めて見たのだが、面白かった。サイコスリラーというジャンル映画でもありながら、モウリーン(クリステン・スチュワート)というひとりの人間としての存在を…
拒絶と選択『害虫』

拒絶と選択『害虫』

公開から15年経った作品だが、あるキッカケで観直すことになり、鑑賞後のやり切れない気持ちに収まりがつけられずに困惑した。15年前はどう対処したのだろう?まったく憶えていない。 主人公サチ子は、小学6年生で担任の教師との恋愛を経験する。 やがて教師は秋田の原発で働くことになり、父は自殺し母は自殺未遂… 「悪い虫」がぶんぶ…
惑う人、生ける都市。『台北ストーリー』

惑う人、生ける都市。『台北ストーリー』

(C)3H productions ltd. All Rights Reserved 主人公アリョン(演ずるはなんと、ホウ・シャオシェン!)は過去に捉われている。少年野球のエースだった栄光を引き摺っている。 ことあるごとに少年野球チームの練習や試合を見に足を運んだり、米国滞在中に録りためた大リーグの試合を繰り返し鑑賞し…
壊れない壁『マイ・ビューティフル・ガーデン』

壊れない壁『マイ・ビューティフル・ガーデン』

(C)This Beautiful Fantastic UK Ltd 2016 本作の主人公ベラは、自分固有の秩序を守って暮らしている。 自ら作り上げた秩序に暮らす人というと、『シンプル・シモン』の主人公シモンが思い出される。 彼がアスペルガー症候群というのがあるにせよその秩序は多分に原理主義的であり、まるで要塞のよう…
世界遺産発見『わたしは、ダニエル・ブレイク』

世界遺産発見『わたしは、ダニエル・ブレイク』

海外渡航経験は僅かだが、30代前半に1週間ほどフランクフルトへ行った。当時の職場は労働組合で上部団体主催の海外交流研修だった。相手の労組に※人生で100回目のストライキの指揮を控えている男性がおり、我々日本人の間では、真面目な頑固おやじ風の彼を「ストおじさん」と呼んでいた。確か観光タイムのランチ時、私の隣りが通訳だった…
聡明な振舞いとは?『未来よ、こんにちは』

聡明な振舞いとは?『未来よ、こんにちは』

(C)2016 CG Cinema・Arte France Cinema・DetailFilm・Rhone-Alpes Cinema 予告編や本作の紹介記事などに、「凛とした女性の強さ」「前向き」といったキーワードが多く見受けられるのだが、強く違和感を感じる。本作に接して僕はそのようなワードは一切思い浮かばなかった。 …
悪魔か?救世主か?『哭声』

悪魔か?救世主か?『哭声』

(C)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION 「信じる」ことは力強く、盲目的だ。 ある人にとっては悪魔のようでも信じる者にとっては救世主のように見える。 何が善で何が悪なのか、何が真実で何が嘘なのか、本当に知ることができるのか? 人間は自分の目で見たもの耳で聞いたものしか…
避けても嵌る魔境『お嬢さん』

避けても嵌る魔境『お嬢さん』

(C)2016 CJ E&M CORPORATION, MOHO FILM, YONG FILM ALL RIGHTS RESERVED 正直、安っぽいポルノまがいの悪趣味映画だろうという先入観があった。 加えてパク・チャヌク監督作品である。快/不快で言ったらまちがいなく不快ゾーンに属する映画体験を今までに蒙っ…
インテリたちの織り成す愛しきバカ騒動『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』

インテリたちの織り成す愛しきバカ騒動『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』

(C)2015 Lily Harding Pictures, LLC All Rights Reserved. 主要登場人物はみんなインテリ。 しかも自分の目指したい道筋というものがはっきりと見えている人たちだ。 主人公マギー(グレタ・ガーウィグ)は、30代で結婚のあてがなくても優秀な子どもが欲しいと、体外受精の準備を…
チャンスの先にあるもの『ラ・ラ・ランド』

チャンスの先にあるもの『ラ・ラ・ランド』

(c) Summit Entertainment、ギャガ、ポニーキャニオン ミュージカルとは馬が合わない。ヒヒーン。 なぜかと言うと、自分の中の“躁”との対峙を強いられるジャンルだからだ。 子供の頃からヒーロー作品にはいまいちのめり込めなかった。なぜなら彼らは大切な場面で必ずと言っていいほど一時の感情に押し流され、窮地…
≪パンパンパンパン≫!インド映画に恋した日『若さは向こう見ず』

≪パンパンパンパン≫!インド映画に恋した日『若さは向こう見ず』

画像出典元:https://en.wikipedia.org/wiki/Yeh_Jawaani_Hai_Deewani その日、私はインド映画に恋をしました。 2015年10月2日、キネカ大森にて『若さは向こう見ず』のマサラ上映に参加。終始心が弾みっぱなしの、あっという間の2時間半でございました。 マサラ上映に関しまし…
「大久保渉」が選ぶ2016年ベスト10

「大久保渉」が選ぶ2016年ベスト10

記憶と結びついている「味」がある。例えば、コーラ味のグミ。小学4年生のとき、飼ったばかりの小鳥を友達に見せようとして庭先に持ち出し、餌をやろうとしたところ逃がしてしまった。泣く私。戸惑う友達。母が慰めにコーラ味のグミをくれた。甘さよりも胸にツンとくるしょっぱい味がした。今でも、スーパーで駄菓子コーナーを通るたびに思い出…
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