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1979年、夏。
冒頭の海岸の俯瞰ショットが美しいサンタバーバラ。
のんびりと風が流れるカリフォルニアの地方都市にも、当時隆盛を誇ったパンクの轟音が響き渡っている。
1924年生まれのドロシアは、設計士として自立しているシングルマザー。
1964年に40歳で出産した息子ジェイミーは15歳。
20年代生まれの彼女が好むジャズと70年代の今を生きるジェイミーの愛聴するパンクのギャップそのままに、思春期の難しい年頃にさしかかった息子と向き合うには大きすぎる年齢差を感じた彼女は、ふたりの女の子に息子の教育係を託す。
ひとりはセラピーに通い、ませた言動が目立つ近所に住む2つ年上の幼馴染の美少女ジュリー。
頻繁に部屋に忍び込み、ベッドに潜り込んできながら「セックスすれば友情は終わり」と何もさせてくれないジュリー。一種の拷問だが、10代特有の男女間の微妙な関係が瑞々しく捉えられていて微笑ましい。
もうひとりはパンキッシュなカメラマン、同居人のアビー。
ショートヘアを赤く染めた、ニューヨーク帰りのアーティスト系女子アビーが教えてくれるダンスや聞かせてくれるカセットテープ。クラブに連れて行ってもらってビールなんか飲んで、年上の女の子に垣間見せてもらえるちょっと背伸びした体験の数々は刺激的でワクワクだ。
ハードコアパンク一派から「いけすかないアート野郎」なんてディスられたりしながらも大好きなトーキング・ヘッズに浸って過ごしたカラフルに輝いていたジェイミーの夏。
でもその輝きは、常に自分を想ってくれる母がいたからこそ。
本作は母と息子のラブストーリーと見ることもできる。が、両者ともが切望しているようなつながりの強さを映画の中ではっきりと見出すことはない。
思うに、本作は愛する人と真のつながりを感じる一瞬をとらえようとしているのではないか。つながりの瞬間は脆くてはかないものかもしれないが、そうした瞬間が起きることは人生においてつかの間といえどもたくさんある。
それらが確かにフィルム(デジタルだけど)に定着されていること、それを映画として観ることができることこそが僕にとっては何にも代え難い喜びなのである。
『20センチュリー・ウーマン』
監督:マイク・ミルズ
出演:アネット・ベニング(ドロシア)、エル・ファニング(ジュリー)、グレタ・ガーウィグ(アビー)
製作年:2016年
製作国:アメリカ
上映時間:119分


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