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ドキュメンタリー

映画としかいいようのない世界『ダゲール街の人々』

映画としかいいようのない世界『ダゲール街の人々』

(C)1994 AGNES VARDA ET ENDFANTS  2019年3月に他界したアニエス・ヴァルダによる1975年制作作品。  ヴァルダが1950年代より事務所兼住居を構えるパリ14区、モンパルナスの一角にあるダゲール通り。撮影当時、ジャック・ドゥミとの子ども・マチューの世話を優先し自宅を長期間離れることを避...

奇跡のはじまりに企てあり『顔たち、ところどころ』

奇跡のはじまりに企てあり『顔たち、ところどころ』

(C)Agnes Varda-JR-Cine-Tamaris, Social Animals 2016 映画監督アニエス・ヴァルダと、写真家でアーティストのJR。 映画はまず2人の出会いを語る。道、バス亭、パン屋、ダンスホールと、それぞれの場所で同じ所にいながら知らない者同士の2人。JRの語り。「まず、ダゲール街の彼女...

「上がり」は見えないが、それがどうした。『苦い銭』

「上がり」は見えないが、それがどうした。『苦い銭』

(c)2016 Gladys Glover-House on Fire-Chinese Shadows-WIL Productions 『苦い銭』は、子供服の中国最大の産地として知られる浙江省湖州市の縫製工場を主な舞台に描かれるドキュメンタリーである。 15歳の少女小敏(シャオミン)が、雲南省(中国で最も貧しい地域のひ...

映画との再会『100人の子供たちが列車を待っている』

映画との再会『100人の子供たちが列車を待っている』

教会を捉えたクレーン撮影と音楽に、トリュフォーの『アメリカの夜』の冒頭を思い起こしてワクワク。 教会の前の土埃が舞いそうな乾燥した道や、映画に目を輝かせる子供たちを目の当たりにして、『ミツバチのささやき』の記憶も甦ってきて鼻の奥がツンときちゃったり… しょっぱなから、心の中にしまってある映画の記憶を詰め込んだ箱をつつか...

偶然のもたらす幸福『ミリキタニの猫』『ミリキタニの記憶』

偶然のもたらす幸福『ミリキタニの猫』『ミリキタニの記憶』

(C)2006 lucid dreaming. Inc. All Rights Reserve. ニューヨークの路上で絵を描き続ける80歳(撮影当時)の日系人画家、ジミー・ミリキタニはカリフォルニアに生まれる。その後母の故郷広島で育つが18歳でアメリカに舞い戻る。第二次大戦中に日系人強制収容所に送られた彼はアメリカ国家...

ファイト!!『スルターン』

ファイト!!『スルターン』

https://www.amazon.com/Sultan-Salman-Anushka-Official-Special/dp/B01JIV76JO  スポーツ観戦における楽しみというのは、例えば、ひいきのチームや選手の活躍をみることでしょう。では感動まで至るのは何か、我々は知らず知らずのうちに選手やチームの立場に自...

本質へ。『シーモアさんと、大人のための人生入門』

本質へ。『シーモアさんと、大人のための人生入門』

(C)2015 Risk Love LLC 自宅でひとりピアノを弾いているシーモア。 ああでもないこうでもないとひとりごちながら、正しい演奏に近づくべくひとつひとつ問題をクリアしていく。 この冒頭シークエンスからたちまち「求道」の凄みが伝わってくる。 パンフレットに書いてあるが映画では描かれていないエピソード。 シーモ...

不意打ちに見るかすかな希望『彼女の名はサビーヌ』

不意打ちに見るかすかな希望『彼女の名はサビーヌ』

若かりし頃の美しく快活なサビーヌと、別人のように太って目も虚ろな現在のサビーヌが交互に描かれる。それはもう徹底的に残酷なほどに「対比」されている。 精神病院に拘束され、強力な薬を飲まされたことで身体の様々な機能が損なわれた結果が今のサビーヌの姿なのだが、現在彼女が暮らしているのはひとまずは丁寧なケアが施されていると思わ...

なりたい自分で在り続ける代償、もしくは孤独。『ホームレス ニューヨークと寝た男』

なりたい自分で在り続ける代償、もしくは孤独。『ホームレス ニューヨークと寝た男』

(C)2014 Schatzi Productions/Filmhaus Films. All rights reserved 52歳のマーク・レイは、イケメンでダンディーなファッションフォトグラファー。 世界中のトップモデルの写真を撮り続け、スタイリッシュな洋服に身を包み、軽快なトークと気さくな人柄から街にもファッシ...

遠い国の昔話と片付けることなかれ『チリの闘い』

遠い国の昔話と片付けることなかれ『チリの闘い』

(C)1975, 1976, 1978 Patricio Guzman 本作の監督であるパトリシオ・グスマン作の『光のノスタルジア』と『真珠のボタン』を上映会で扱わせていただいた。 この2作品は、独裁者ピノチェトによって夥しい人々が収容所に送られ苛烈な拷問を受け命を落としたことを、宇宙的視野で淡々と見つめている。 その...

心の奥底がドクンと鼓舞されてしまった―『THE COCPIT』

心の奥底がドクンと鼓舞されてしまった―『THE COCPIT』

©http://cockpit-movie.com/ 「すいません」「すいません」 昔、口癖のように何かあるとつい謝ってしまう自分に対して、とある先輩が窘めてきたことがある。「やめなさい」と。 それは、作品全体としてはあまり関係のないことなのかもしれないけれども、今作『THE COCPIT』で描かれている主人公OMSB...

喜びを得るという罪『ブラック・フィッシュ』

喜びを得るという罪『ブラック・フィッシュ』

シャチが好きだ。 流線型の美しいフォルムに白と黒の鮮やかなツートンカラー。人間並みに感情豊かで、家族や仲間を大切にし、群れごとに言語を持ち、いざとなればホワイトシャークすらねじ伏せる。 仕事に倦んだときなどは、シャチが大海を優雅に泳ぎ回る映像を観ているだけで癒されるし、もちろんかの海洋動物パニックの名作『オルカ』も何回...

プロフェッシュナルの所作に触れる喜び『A Film About Coffee ア・フィルム・アバウト・コーヒー』

プロフェッシュナルの所作に触れる喜び『A Film About Coffee ア・フィルム・アバウト・コーヒー』

(C)2014 Avocados and Coconuts. (C)2015 mejirofilms ざっくり言うと、スペシャルティコーヒーはいかにして作られるか、というドキュメンタリーである。 昨今、食に関するドキュメンタリーを作るにあたって環境問題を付随して描くことを避けて通るわけにはいくまい。 コーヒーについて描...

銃ではなく、言葉を『それでも僕は帰る~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』

銃ではなく、言葉を『それでも僕は帰る~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』

(c)UNITED PEOPLE ドキュメンタリー映画『それでも僕は帰る~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』。2011年から始まったシリアにおける民主化運動の闘争を、若きリーダー・バセットの傍らで約2年間に渡って撮影し続けたという今作。 映像の中で目視できた死体の数は30体以上。口や鼻から血をたらして横たわってい...

静寂に永遠が見えた『大いなる沈黙へーグランド・シャルトルーズ修道院』

静寂に永遠が見えた『大いなる沈黙へーグランド・シャルトルーズ修道院』

画像出典元:http://www.allcinema.net/prog/image_large.php?i=348891&t 沈黙を戒律とする修道院がある。 それがグランド・シャルトルーズ修道院である。 修道士は、沈黙のまま仕事をする。 畑を耕し、薪を割って、食材を刻み、床を掃く。 時間になれば、祈りを捧げる。...

生まれてきた意味『かみさまとのやくそく~胎内記憶を語る子どもたち~』

生まれてきた意味『かみさまとのやくそく~胎内記憶を語る子どもたち~』

(C) 2013 copyright 荻久保則男 あなたの最初の記憶はなんだろうか。 多くの人の1番古い記憶は、3歳前後の記憶である。 発達心理学の研究では、3歳くらいまでは、本当に短い時間の記憶しか保持できないとされており、それがそれまでの出来事を思い出せない理由とされてきた。 科学的に証明できないものにぶつかると、...

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