
教会を捉えたクレーン撮影と音楽に、トリュフォーの『アメリカの夜』の冒頭を思い起こしてワクワク。
教会の前の土埃が舞いそうな乾燥した道や、映画に目を輝かせる子供たちを目の当たりにして、『ミツバチのささやき』の記憶も甦ってきて鼻の奥がツンときちゃったり…
しょっぱなから、心の中にしまってある映画の記憶を詰め込んだ箱をつつかれて心がザワザワ、ウキウキ。
スペイン語を話しているので舞台は南米のどこかだろうか?子供たちの身なりは一様に貧しそうだな、なんて観ていると、ふいに子供の口から「秘密警察」という単語が出てきてギョっとする。まもなくこの映画の舞台はピノチェト政権下のチリであることが判明する。
そんな背景を持ちつつ、映画のなかで映画教室が進んでゆく。
手作りの装置を通して「絵が動く」原理を一から講釈してもらえる。映画の歴史を教えてもらえる。「1895年12月28日。この日付(言うまでもなく、リュミエールが初めて映画を上映した日付だ)を覚えていてくださいね」という先生のセリフにわたしは素直に頷いてしまった。
つまりわたしは映画のなかの子供たちといっしょに映画の原理、映画のなりたちを学び、楽しんだ。そんな経験の蓄積の先に待っている映画の中の映画との出会い。リュミエールの汽車やチャップリンの動き。今まで何度も目にし、もはや何の感慨も湧き起こらなくなっていた映画の一場面が『100人の子供たちが列車を待っている』の中で光り、輝く。
冒頭で子供たちに「今まで観た映画は」という問いかけがある。ロッキーとランボーくらいしか出てこない。ほとんどの子は映画を観たことがない。政権による抑圧のせいか、経済上の問題なのか。恐らくその両方なのだろうが、とにもかくにも子供たちは映画を学んだ。そして意気揚々とバスに乗って映画館に向かうのだ!
『100人の子供たちが列車を待っている』
監督:イグナシオ・アグエロ
製作年:1988年
製作国:チリ
上映時間:58分


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