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ホラー

壮絶な顔芸合戦に震える『ババドック~暗闇の魔物~』

これはちょっとした掘り出し物だ。

『ババドック』が成功している最大の要因はキャスティング。子育てに疲弊し、徐々に精神を病んでいくシングルマザー、アメリア役のエシー・デイヴィスと、多動症気味な息子のサミュエルを演じたノア・ワイズマンの壮絶な“顔芸”の応酬がなければ、ここまで恐ろしく、厭な後味の残る作品には昇華しえなかったろう。

それにしても本作が監督長編デビュー作となるジェニファー・ケントは、こんなデフォルトで怪物っぽい顔をしている子役をよく見つけてきたものだと感心する。キレやすく、武器の扱いに長け、友だちや親にまで暴力を振るうという異色のキャラクター設定と、その人格を過不足なく体現するワイズマンの顔芸により、観客を豪快にミスリードしていく前半の語り口はなかなか斬新である。

一方、後半になってその存在感をぐんぐん増していくのがエシー・デイヴィスの顔芸だ。体当たりという表現では生ぬるいほど凄烈な形相がこれでもか、これでもかと画面に叩きつけられ、観る者のポテチをついばむ手をはたと止めさせる。

物語のカギをにぎる絵本「ババドック」の気合の入った仕上がり具合や、メタファーがふんだんに盛り込まれたストーリーも素晴らしい。結局のところ人間は、心の中の魔物を一生飼い続けていくしかないのだろうか。

いかにもB級ホラーなジャケットのせいで損をしているが、その中身は『シャイニング』や『ブラック・スワン』の系譜に組み込まれるべき心理スリラーの秀作だ。

『ババドック~暗闇の魔物~』
監督:ジェニファー・ケント
出演:エシー・デイヴィス、ノア・ワイズマン
製作年:2013年
製作国:オーストラリア
上映時間:84分

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とら猫 aka BadCats
メジャー系からマイナー系まで幅広いジャンルの映画をこよなく愛する、猫。本サイトでは特にホラー映画の地位向上を旗印に、ニンゲンとの長い共存生活の末にマスターした秘技・肉球タイピングを駆使してレビューをしたためる。商業主義の荒波に斜め後ろから立ち向かう、草の根系インディー映画レーベル“BadCats”(第一弾『私はゴースト』)主宰。twitter@badcatsmovie

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