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ドキュメンタリー

銃ではなく、言葉を『それでも僕は帰る~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』

銃ではなく、言葉を『それでも僕は帰る~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』

(c)UNITED PEOPLE

ドキュメンタリー映画『それでも僕は帰る~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』。2011年から始まったシリアにおける民主化運動の闘争を、若きリーダー・バセットの傍らで約2年間に渡って撮影し続けたという今作。

映像の中で目視できた死体の数は30体以上。口や鼻から血をたらして横たわっている少年。治療室で目を見開いたまま動かなくなってしまった青年。白い布に包まれた、もはや人とも判別できない物体の数々。それでもいつまでも止むことなく鳴り続ける銃声に、空を切り裂く爆撃音…。

混乱。混沌。怒り。哀しみ。疑問を差し挟む余地がないほどに迫りくる危機。対話不可能な惨状。そう。映画を見ていて私が一番感じたことは、「対話不可能な惨状」、その一言に尽きるのかもしれません。なにより、今作の中ではどんなに激しい戦闘が繰り広げられていようとも、民衆側と相対する政治家・軍隊の姿がほとんど映し出されていない、もはや闘うことでしかその場を収めることができなくなってしまった惨状が、片一方の視点からのみ延々と映しだされているのです。

それでは一体、誰が武力ではなく言葉でこの問題を解決することができるのであろうか。それこそが、観客である我々一人ひとりなのではないだろうかと、映画を観ながらふと思いました。映画は、もはや対話をすることができなくなってしまったシリアの現場を離れて、世界中の人々に言葉を投げかけ、そして投げ返してきて欲しいと願ってつくられたのかもしれません。

是非とも、今作を一度観て頂けたらと思います。そして、一緒に何かを感じていただけましたら幸いです。

『それでも僕は帰る~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』

監督:タラール・デルキ
製作年:2013年
製作国:シリア・ドイツ合作
上映時間:89分

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大久保 渉
大久保 渉
ライター・編集者・映画宣伝。フリーで色々。執筆・編集「映画芸術」「ことばの映画館」「neoneo」「FILMAGA」ほか。東京ろう映画祭スタッフほか。邦画とインド映画を応援中。でも米も仏も何でも好き。BLANKEY JET CITYの『水色』が好き。桃と味噌汁が好き。
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