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「大久保渉」が選ぶ2016年ベスト10

「大久保渉」が選ぶ2016年ベスト10

記憶と結びついている「味」がある。例えば、コーラ味のグミ。小学4年生のとき、飼ったばかりの小鳥を友達に見せようとして庭先に持ち出し、餌をやろうとしたところ逃がしてしまった。泣く私。戸惑う友達。母が慰めにコーラ味のグミをくれた。甘さよりも胸にツンとくるしょっぱい味がした。今でも、スーパーで駄菓子コーナーを通るたびに思い出す。あのしょんぼりした気持ち。でも、不思議と叱らずになだめてくれた母の優しさが嬉しかったので、今でも食べる。落ち込んだ時に。弾力のある塊を噛んで滲み出る甘さが、じわりと心を、癒してくれるから。
そんなことを考えつつ、2016年のお気に入り映画を、グーときた飲食シーンと併せて選んでみました。

1位:『山河ノスタルジア』(ジャ・ジャンクー監督/中国・日本・フランス合作)
餃子のシーンがとても好き。別れた小さな息子と久しぶりに会う母親が一つひとつ手にとってつくった餃子を、こどもと顔を見合わせながら淡々と食べる姿に涙と涎がこみあげました。母の胸の内には火傷するほどに熱い思いがあっただろうに。そして息子は遠い未来で思い出す。記憶の底から溢れ出す愛の味を。大好きです。

2位:『湯を沸かすほどの熱い愛』(中野量太監督/日本)
しゃぶしゃぶのシーンがとても好き。家族みんなで食卓を囲み、肉をつまんで湯に踊らせつつ、もっと食べなよとお皿によそってフフフと笑い合う姿に心とお腹がキュンとなりました。沸き立つお湯は身をほぐし、芯から温めてくれる。思わずふーっと一息でちゃう、あの幸福感。大好きです。蟹も好きです。

3位:『Every Day』(手塚悟監督/日本)
おむすびのシーンがとても好き。「相手のことを思って握られたのが『おむすび』」、「ただ握られたのが『おにぎり』」なのだと不思議なおじさんは言う。なんだかいい言葉。嘘か誠か。どっちでもいい。おむすび食べたい。大好きです。

4位:『この世界の片隅に』(片渕須直監督/日本)
主人公のつくる手料理がとても好き。好き。好き。大好き。

5位:『アスファルト』(サミュエル・ベンシェトリ監督/フランス)
クスクスのシーンがとても好き。突然空から降ってきた異国の来訪者に手料理をふるまうアルジェリア系移民の老女。クスクス鍋は二段式になっていて、下段でスープを煮て、その蒸気で上段のクスクス粒を蒸す。相手を想ってつくられた料理は人種の、言語の壁を越えて、その場にいる者の気持ちをホカホカ和やかにする。不安でこわばった顔をほころばせる。クスクス。大好きです。

6位:『コインロッカーの女』(ハン・ジュニ監督/韓国)
麺をすするシーンがとても好き。裏社会に生きる女帝とその義娘と義息子たち。過去の回想シーンで「ほら、食べな」と孤児を家に迎え入れる女帝の微笑みにドキリくる。食卓を囲んで生まれた絆の強さに、どこまでも続くその縁に、ズンと胸が打たれました。

7位:『SHARING』(篠崎誠監督/日本)
お酒を飲むシーンがとても好き。木村知貴さんの「まあ飲もうよ」的なゆるさが息の詰まる展開の中でちょっとほっこりできてとても好きです。

8位:『PK』(ラージ・クマール・ヒラニ監督/インド)
エスプレッソの泡を鼻の下につけるためにわざとカップをぐいと飲むPKの姿がとても好き。かわいい。

9位:『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』(黒川幸則監督/日本)
ビールを沢山飲むシーンがとても好き。お話自体も酔いが回ったみたいにめちゃくちゃでいいな~と思いました。

10位:『バベットの晩餐会』(ガブリエル・アクセル監督/デンマーク)
いわずもがな、お料理映画の名作。今年の公開作品のリストに載っていたので選出しました。

はてさて、今年はもっとトランシネマにレビューを投稿できるよう、たくさん食べて体力をつけてがんばりたいと思います。

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大久保 渉
大久保 渉
映画系文筆/映画館勤め/映画祭好き。執筆・編集『映画芸術』『ことばの映画館』『FILMAGA』他/ KAWASAKIしんゆり映画祭、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭、インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン他、各種映画祭にて活動中/現在は神奈川県内の映画館にて勤務中。
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