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ドキュメンタリー

プロフェッシュナルの所作に触れる喜び『A Film About Coffee ア・フィルム・アバウト・コーヒー』

プロフェッシュナルの所作に触れる喜び『A Film About Coffee ア・フィルム・アバウト・コーヒー』

(C)2014 Avocados and Coconuts. (C)2015 mejirofilms

ざっくり言うと、スペシャルティコーヒーはいかにして作られるか、というドキュメンタリーである。

昨今、食に関するドキュメンタリーを作るにあたって環境問題を付随して描くことを避けて通るわけにはいくまい。
コーヒーについて描く場合も同様だろう。
コーヒーの生産地である南半球地域の貧困や環境破壊といったテーマは不可避と思われる。
が、本作はそういった環境問題的側面にはあまり触れず、上質のコーヒーの、生産から消費者に届く過程を描くことに専念している。
思い切った判断だと思うし、コーヒー大好きである監督(とパンフレットに書いてあった)が描く「極上のコーヒー」の絵は観ていてとても心が躍った。僕もコーヒー大好きだし。

僕にとっての本作のハイライトは「大坊珈琲店」のシーンである。
現在は既に閉店してしまった大坊珈琲店の店主である大坊勝次さんがコーヒーを淹れる様を丁寧に描いている。
コーヒーカップを選び、コーヒー豆を炒り、その間にカップにお湯を満たして温める…一連の動作の無駄のない美しさにまずは息をのむ。続いて布のフィルターにお湯を水滴状にかけてドリップしていく。その熟達の技のすばらしさよ!
そんな感じで息をひそめて画面に食い入ること約5分。宝石のように輝く黒い液体に満たされたカップが供されるのを見届けてこのシーンは終わる。
できあがったコーヒーを見てため息が出る。
ああ、僕はこのコーヒーを飲みたい!

38年間美味しいコーヒーを探求し続け、店を訪れる人をもてなしてきた時間の積み重ねが作り上げた美しい所作。
専門家へのインタビューが主体の作品だが(ドキュメンタリーはどうしてもインタビューが多くなる)が、このシーンだけは言葉を排除し、大坊さんの美しい所作をただ映しとることに集中している。
最大限に賢明な判断だ。
やはり「映画」と名乗る以上、いい絵で魅せて欲しいものだと、つくづく思う。

このシーンを体験するだけで『A Film About Coffee』は感動に値する作品となりえている。

『A Film About Coffee ア・フィルム・アバウト・コーヒー』
監督:ブランドン・ローパー
製作年:2014年
製作国:アメリカ
上映時間:66分

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館長
館長
仙台で映画館を開業して、生まれ故郷の発展に貢献したいと思っている50歳です。 50年間、経済的にも精神的にも映画に救われ続けてきたという思いがあります。 ミニシアターを作ることで、ささやかながら映画に恩返ししたいと思っています…といっても何か秘策があるわけではまるでなし。 今できることは、とにかく思いを発信し続けていくだけです!
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