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スポーツ観戦における楽しみというのは、例えば、ひいきのチームや選手の活躍をみることでしょう。では感動まで至るのは何か、我々は知らず知らずのうちに選手やチームの立場に自分の現在の姿を投影することがあります。日頃の鬱積した気持ちとか、忸怩たる思いとか、人生の悩みとかを闘う選手(たち)に重ね合わせ、それが昇華されること感動がで生まれるのだと思います。映画においても同様なことはあります。だからスポーツと映画はとても相性が良いのです。
『スルターン』、この作品は2部に分かれています。1つはレスリングにおけるトップアスリートまでの道、もう1つは総合格闘技へのチャレンジで「挫折からの再起はなるか」という2部作。舞踊シーンも踊りはキレッキレ、コミカルさもあり見応えがありました。時系列ではありませんが、1つずつでも起承転結になっていて、作品1本分なので、3時間弱といってもあっという間。短いくらいの感じでした。かつてチョコレートの宣伝で「1粒で2度美味しい」と言うのがありましたが、まさにそんな映画です。
スルターンを演じるのはサルマ-ン・カーン、肉体派の本領発揮です。ヒロイン、アールファーを演じるのはアヌシュカー・シャルマー、「PK」の時同様、綺麗でキュートで、男勝りでコミカルで陰もあって目が離せません。彼女もレスリング道場主の父親の元、女性の地位向上を意識しながら女子レスリングしています。
スルターンのレスラーとしてのスタイルも若い頃の第1部では、初代タイガーマスクみたいで、俊敏性と技のキレと力強さをもつ、完璧なレスラー。一気に頂点まで昇り詰めます。その原動力こそ、アールファーへの想いです。第1部と第2部の間には10年弱の時間差があります。第2部は、スルターン自身の思い上がりと不幸な出来事から挫折を経験、レスリングから離れています。そのタイミングで興業的に追いつめられたインドの総合格闘技のプロモーターから声がかかります。一旦リタイアしたあとの挑戦なので、まさに戦法を含め『ロッキー』、打たせて打たせて、重い技でをズドンとかえすのです。ロッキーは「イタリアの種馬」、さしづめスルターンは「インドの雄牛」です。
必殺技があります。「スルターン・スペシャル」と実況では名付けていますが、いわゆる「ジャーマン・スープレックス」なのです。それも効果を上げるために打つ前に一手間かけ、技の後のポーズも独特、だから「スルターン・スープレックス」の方がしっくりくるかなと思います。
この作品は闘う人たちへの応援歌です。ヒーローもヒロインも出演者は何かしらと闘っています。スポーツであっても仕事であっても、私生活であっても。そしてその闘いが最後にスルターンに象徴として集約されます。だから皆、自分の人生を彼に託すかのように試合の行方をを見守ります。そして映画の観客もいつしかスルターンに自分を投影し、彼の諦めない熱い闘いを息を呑んで見守ることになります。全編に亘って、闘う人は美しいんだと叫んでいるように思えるのです。あたかも実在の人物のようなこの迫力。サルマーン・カーンの存在感がなせる技でしょう。エンディングロールの後日譚も効果的で、密度の濃い、感動と充実の時間でした。
『スルターン』
監督:アリー・アッバース・ザファル
製作:アーディティヤ・チョープラー
出演:サルマーン・カーン、アヌシュカー・シャルマー
製作年:2016年
製作国:インド
言語:ヒンディー語
上映時間:169分
配給:ヤシュ・ラージ・フィルムズ
インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン IFFJ2017で上映中
2017年10月6日(金)~10月27日(金)東京:ヒューマントラストシネマ渋谷
2017年10月7日(土)~10月27日(金)大阪:テアトル梅田
URL:http://indianfilmfestivaljapan.com/
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