画像出典元:http://www.allcinema.net/prog/image_large.php?i=348891&t
沈黙を戒律とする修道院がある。
それがグランド・シャルトルーズ修道院である。
修道士は、沈黙のまま仕事をする。
畑を耕し、薪を割って、食材を刻み、床を掃く。
時間になれば、祈りを捧げる。自分のためでなく、この世界の誰かのために。
そこでは、すべてが雪や霧に白く霞んでいる。その中で、彼らの食す野菜はあまりにも鮮やかだ。
その眩しいほどの緑に、生き物を食べることは特別なことだと改めて気づく。
考えてみれば、生きるためにする行為に、特別でないものなど、何もないのかもしれない。
彼らは、食事も、睡眠も、談笑も充分にはしない。
できるだけ質素に生きることで、神経を研ぎ澄ます。
少し眠り、すぐに起きては聖堂で賛美歌を歌う。午前3時、真っ暗闇の中で。
厳しい戒律のもと、祈るためだけに存在しているというのに、彼らを見ていると、こんなにも自由を感じるのはなぜなのだろうか。物に囲まれ、飽くほどの食べ物があって、何でもできるような世界に生きている私の方が、よっぽど不自由に感じる。
以前、日本のシスターの1日を追ったドキュメンタリーを見たことがある。彼女のワードローブは、修道服が3枚だけ。スカスカのクローゼットを前に、「服を選ぶことがないって、とっても自由なことよ。」と穏やかに語った。
制服など、管理されていることの象徴だとすら考えていた私は、本当の自由とは、もっと別の何かなのかもしれないとぼんやりと思った。
修道士の姿は、いつも私に自由の意味を問いただす。
彼らの姿に美しさすら感じるのも、聖堂に響く賛美歌に心打たれるのも、彼らが耳を澄ましているからだ。
内なる自由に。
大いなる沈黙に。
やがて喜びとともに訪れる死に。
だから私も、耳を澄ます。
私の内に語りかける静寂へと。
『大いなる沈黙へーグランド・シャルトルーズ修道院』
監督:フィリップ・グレーニング
制作国:フランス・スイス・ドイツ
製作年:2005年
上映時間:169分
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