
(C)「雨にゆれる女」members
これは、夜の映画である。
赤、橙、緑の光が揺らめき、影が一層濃くなったように思える。全てを隠してくれるようでも、否応なく朝は来る。
偽名を使って隠れるように生きている男の話、というストーリーに反して、主人公はいたって普通の感覚を持った人である。
誰かが困っていれば手を差し伸べてしまう。手を差し伸べれば情が湧く。
心を寄せるのは拒むよりもずっと簡単で
その簡単さにうんざりする。
彼はその感覚が狂っていたなら、もしくは狂えたならどんなに良かったかと思っただろう。
嘘をつき続けるのは疲れる。嘘が大きくなればなおさら。
鉄壁を装っても、所詮は砂の壁。崩れるのは一瞬だ。
この映画を見ていると、人生は、夜の運転のようにも思えてくる。
同じように先へと向かう車のテールランプの赤さが気になって仕方ない。すれ違う車のライトが橙色にやけに眩しく光る。そのほかは闇に消える。
1人でいれば不安に襲われる。目的を果たすのに、この道で本当にいいんだろうか。
明けてしまえば、すべてが白々しい。
闇に紛れていれば美しかった、そのネオンの輝きも。
忘れまいとしても、記憶は留まってはくれない。こぼれ落ちて、雨になる。
雨は弾けて音になる。それは記憶を疼かせて、濡れて膿んだ傷になる。
傷の痛みを抱えながら、焔が照らす夜に酔う。
光が影を濃くするように、音楽が静寂と呟きを際立たせる。
雨の女と夜の男。
雨と夜の物語。
『雨にゆれる女』
監督:半野喜弘
出演:青木崇高、大野いと、岡山天音
製作年:2016年
製作国:日本
上映時間:83分
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昭和モダ子
基本スタイルは、映画鑑賞=人間観察。人間の機微を描く映画が好きです。漫画、小説、音楽のことなんかも、映画とミックスしてお届けできたらと思っております。邦画とドキュメンタリーが頻繁に登場しますが、どうぞお付き合いくださいませね。

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