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心の奥底がドクンと鼓舞されてしまった―『THE COCPIT』

心の奥底がドクンと鼓舞されてしまった―『THE COCPIT』

©http://cockpit-movie.com/

「すいません」「すいません」

昔、口癖のように何かあるとつい謝ってしまう自分に対して、とある先輩が窘めてきたことがある。「やめなさい」と。

それは、作品全体としてはあまり関係のないことなのかもしれないけれども、今作『THE COCPIT』で描かれている主人公OMSBの立ち振る舞いを見て、ついそんな個人的体験を思い出してしまった。

傲慢でもなく、気負うでもなく、試行錯誤を繰り返しながら、ただ意気揚々と曲を生み出していくラッパー、トラック・メイカーの主人公。彼の部屋の机の上に置かれた固定カメラが、彼の日常を、彼の音楽に向けた姿勢を、真正面から記録していく。

「しゃす!」…「しゃす!!」…。

たぶん「お願いします」の意味なのだろう。マイクに向かってレコーディングをしている最中、イメージ通りにいかないのか、何度もリテイクを繰り返す彼が仲間のスタッフに向かって口にする言葉である。

言葉は「言魂」とでも言えようか。何故だか、ひたすら己を信じて前に進もうとするOMSBの姿に、力強い声に惹きつけられてしまい、その後に続く彼の音楽、男の顔、リズムに合わせて揺さぶる体躯、画面に映るものすべてに、胸がドクンと鼓舞されてしまった。

「『日常』と『創作』はいつも隣合わせ」。今作の公式HPに書かれている言葉である。

この言葉について、OMSBに関わらず、人間の行動の一つひとつは何か「創作」活動なんじゃないかなという風に勝手に解釈してしまった。

映画の中では、視覚的にも聴覚的にも、生ける者の鼓動が、いつなんどきでも生まれる新しい「一瞬」の胎動が、絶えず画面いっぱいに響き渡っていたように感じられた。

「すいません」。あの時私はなんだかやることなすこと自信がなく、周りから言われることすべてに怖気づいていたような気がする。でも、今は割と、自分の心に耳を傾け、自分の行動に目を向けて、意気揚々と生きていけているような気がする。

脈打つ己の「心臓」の音をサンプリングし、独特のリズムでパッドを叩きながら、理想の自分を探していく。そして、力強く自分の「心」からの声を、発する。

エンドロールで流れる「音楽」に、またドンッと背中を押された。

『THE COCPIT』

監督:三宅唱

出演:OMSB、bim

製作年:2014

製作国:日本

上映時間:64分

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大久保 渉
大久保 渉
ライター・編集者・映画宣伝。フリーで色々。執筆・編集「映画芸術」「ことばの映画館」「neoneo」「FILMAGA」ほか。東京ろう映画祭スタッフほか。邦画とインド映画を応援中。でも米も仏も何でも好き。BLANKEY JET CITYの『水色』が好き。桃と味噌汁が好き。
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