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仙台に未来の映画館を創る『館長日記』と『シネマレビュー』

ドキュメンタリー

なりたい自分で在り続ける代償、もしくは孤独。『ホームレス ニューヨークと寝た男』

(C)2014 Schatzi Productions/Filmhaus Films. All rights reserved

52歳のマーク・レイは、イケメンでダンディーなファッションフォトグラファー。
世界中のトップモデルの写真を撮り続け、スタイリッシュな洋服に身を包み、軽快なトークと気さくな人柄から街にもファッション業界にもたくさんの知り合いがいる。
しかし、仕事やパーティーを終えてすっかり夜が更けた頃、彼はとあるアパートのビルに向かう。行き先はその屋上にある寝床。ビニールシートに身を包み、冷たいコンクリートの上で眠りにつくのだ。

自由きままに生き、50歳を過ぎてもモテてるみたいだし(じっさい映画の中で偶然ビーチで知り合ったフランス人女性映画監督と恋に落ちるシーンがある)、ホームレスだけど羨ましい生き様…ってことはさすがにない。ジムでシャワーを浴びアイロンをかけ、公衆トイレで髭を剃り、屋上で眠るなんて、想像するだけでもしんどい。自分には不可能な生き方だ。

仕事もしているし、知り合いも友人も家族もいる。でも住む場所がない、家を借りるほどの経済力がないというのがマーク・レイの置かれた状況。
大都会ニューヨークの居住コストはバカ高いけどそれでもニューヨークに住み続けたい、という欲求の行き着く先がホームレス生活であると言えなくもない。自業自得と言えばそれまでだが、では生活コストが安く空気がきれいで過ごしやすい地方都市に移り住んだとして、マーク・レイは幸せに生きていけるのだろうか?僕にはそうは思えない。
本作を観たさいにちょうどプロモーションで本人が来日していたので、サインをもらって記念写真も撮ってもらったのだが、マーク・レイはこの世のものとは思えぬほどカッコよかった2/5館長日記参照。この男はニューヨークで生きるしかないのだと直観した。

マーク・レイは気さくに言葉を交わす街の人々と一見つながっているようで、結局は誰とも深い関係性を築けていない。屋上の闇の中でビニールシートにくるまってさめざめと泣きながら「まっとうな結婚生活はとうに諦めてるけどやっぱり愛が欲しい」と呟くラストシーンで、「孤独」という人類の根源的な闇に接した思いで暗澹とした気分になりつつ、エンドロールで流れるカイル・イーストウッドの優雅なジャズのスコアにうっとりするという倒錯的な気分で劇場を後にすることとなった次第である。

『ホームレス ニューヨークと寝た男』
監督:トーマス・ヴィルテンゾーン
出演:マーク・レイ
製作年:2014年
製作国:オーストリア、アメリカ
上映時間:83分

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館長
館長
仙台で映画館を開業して、生まれ故郷の発展に貢献したいと思っている49歳です。 49年間、経済的にも精神的にも映画に救われ続けてきたという思いがあります。 ミニシアターを作ることで、ささやかながら映画に恩返ししたいと思っています…といっても何か秘策があるわけではまるでなし。 今できることは、とにかく思いを発信し続けていくだけです!

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