「フランス女は気が強い」フランスをよく知る人がそう言っていた。そしてその人はこうも言った、「いい大人になっても内気で人見知りな態度はフランスでは恥ずべきことだ。しかし、この『緑の光線』の主人公はめちゃめちゃ内気でうじうじした女である。」その言葉を聞いて、これは私こそ観なければならない映画だと思った。というのも、物心がついた頃から自分の内気さに呆れるほど悩まされてきた私に、この作品は共感と新しい発見をもたらしてくれる、そんな期待を感じさせてくれたから。
映画を観てみると、主人公のうじうじっぷりは想像以上だった。女友達と言い争いになれば最後は物陰で泣き、それをみかねた友達の誘いで出かけたバカンス先でもまわりに溶け込めず木陰で泣くという。こんなの流石の私でもないなあ。つらい。見ているのがつら過ぎる。もはや共感を感じるどころか自分との距離感が広がっていく。
それでも、映画の中の主人公の痛々しい行動を追い続けるうちに、「あれ、この気持ちなんかわかる・・・」と、いつの間にか共感している自分がいる。主人公の行動の裏側にあるのは、過去の恋愛の失敗からくる人間不信であり、男性を信じて傷つくことに対する不安なのだということがわかってくるから。たかが失恋だとしても、真摯な気持ちで築いた関係の綻びは人の心を傷つける。そういう痛みなら私も知っている。
人を信じて失敗することは痛くて苦しい。それでもそれを知りながら、傷つくことも覚悟の上で信じることができる。それが人としての強さであり、そういった強さを持つことが自立なのだと思う。だからきっと私たちは怖がってばかりいないでもっと人を信じることをするべきなのだ。
そして最後に浮かぶ疑問。「緑の光線」って結局なんだったんだろう?実在する自然現象なのか?それとも架空のもの?・・・この際もうどちらでもいい。そんなことよりも、信じることから逃げていた女が「緑の光線」などという気付け薬のようなものの力を借りて「人を信じる」というチャレンジに再び踏み出していく。そんなラストシーンに私はぐっと心を掴まれてしまったのです。
『緑の光線』Le rayon vert
監督:エリック・ロメール
出演:マリー・リビエール、リサ・エレディア
製作年:1985年
製作国:フランス
上映時間:94分
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