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仙台に未来の映画館を創る『館長日記』と『シネマレビュー』

ヒューマン

野生への目覚め。反野生との相克『ワイルド わたしの中の獣』

(C)2014 Heimatfilm GmbH + Co KG

ITアパレル会社で働くアニアは美人だけど地味で冴えないOL。冴えないを通り越して機械的に生きてる感じ。
上司ボリスの、人を呼びつけるときには物を投げるという、見ているだけでムカツク高慢で横柄な態度にも淡々と従っている。
ところがある朝、アニアは森で一匹のオオカミと出会い、その凜とした姿に一目惚れしてしまうのだ。
(このオオカミ、ホントにカッコイイ!僕も一発で虜になりました)

即断即決。アニアはオオカミの捕獲を決意する。
麻酔薬を仕込んだ吹き矢でオオカミを仕留めたシーンには「ありえね~」とのけぞってしまったが、とにもかくにもアニアは自宅のアパートの一室にオオカミを閉じ込めることに成功する。
しかし糞尿や食い残しの肉が発する、近隣住民から苦情が来るほどの悪臭。画面から臭ってくるかのようなリアリティーがあったので、潔癖症の方はここでリタイアだろう。
やがて鬱憤をためたオオカミが暴れ始め、なんと壁がまる一面倒されて破壊される。これまたありえない感じの描写だったが、この何かが決壊した感じが自分としては清々しく、自分的にここが本作のターニングポイントだった。
これを機に、アニアは自らの野生に忠実に振る舞うように変化してゆくのである。

腹が減ったら他人の食べ残しだろうが食う。
大便をしたくなったらその場で脱糞。
アニアが内心ボリスをどう思っていたかは知らないが、ボリスの求めに応じてまさに動物の如く交わる。
しかしボリスは「一緒に暮らそう。犬小屋も作る」の一言が致命傷となり、オオカミに食い殺されてしまう(殺されたかどうかは描写されないが、僕の脳内補完により、野生を求める者(人&獣)に対するあまりな愚かな一言をもって殺されたということになっている)。

アニアとオオカミは荒涼とした自然の中をあてどもなく彷徨う。
オオカミと一緒に水たまりの泥水を飲み、オオカミに狩ってもらったネズミをむさぼるアニア。
彼女は現実の人間社会から疎外されたのか、それとも野生に生きる自由を勝ち取ったのか。
映画では明示されない。
アニアが気が抜けたように微笑むあまりにも印象的なラストシーンから感じとるしかあるまい。

『ワイルド わたしの中の獣』
監督:ニコレッテ・クレビッツ
出演:リリト・シュタンゲンベルク(アニア)、ゲオルク・フリードリヒ(ボリス)、ネルソン(オオカミ)
製作年:2016年
製作国:ドイツ
上映時間:97分

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館長
館長
仙台で映画館を開業して、生まれ故郷の発展に貢献したいと思っている49歳です。 49年間、経済的にも精神的にも映画に救われ続けてきたという思いがあります。 ミニシアターを作ることで、ささやかながら映画に恩返ししたいと思っています…といっても何か秘策があるわけではまるでなし。 今できることは、とにかく思いを発信し続けていくだけです!

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