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子供の授からない夫婦がたまたま流れ着いてきた赤ちゃんを自分の子として育てるという「過ち」を犯すことから、胸の引き裂かれるような悲劇に発展していく本作。
そのまま黙って秘密を墓場まで持っていくという選択肢もあったかと思う。僕もそれでいいんじゃないかと途中まで思いかけていた。が、それは絶対にアウトなのである。なぜなら、夫婦も、そしてわれわれ観客もその子を失って悲嘆にくれている生みの母親に出会ってしまったから。
人生においては基本的に自分中心に光が当たっている。が、光があれば影がある。影は自分からは見えない。しかし夫婦はその影たる生みの母親に会ってしまった。彼女の悲嘆を感知してしまった。同じく観客である僕も感知してしまった。よって子供は彼女に返されなくてはならぬ。当然だ。
しかしだ。
子供は生みの母親になつかない。当然だ。子供にとっては物心ついた頃から大事に育ててくれた育ての親こそが真の親なのだから。これは子供にとって残酷すぎる仕打ちだ。もちろん生みの母親の心の苦しみも同様だ。
罪を犯した夫は妻の罪も被って監獄に入る。しかしいつくしんだ子供と引き裂かれたと、妻から恨まれてしまうというやるせなさの極地。
もしかして夫は最悪の選択をしたのだろうか?
では、赤ちゃんをすぐに親元に帰していればよかったのだろうか?
しかしこれは、映画を俯瞰しうる観客としての特等席からの「まっとうな」判断にすぎない。
赤ん坊に固執し、既に赤ん坊が自分の身体と一体化しているがごとき妻を目の当たりにしてその「まっとうな」行動をとったのなら、即座に妻は壊れてしまったかもしれないのだから。
じゃあどうするのが一番よかったんだよ!
苛立ちながらも反芻していると、ある人物の姿が浮かび上がってくる。劇中で既にこの世にいない、生みの父親だ。
この亡き父親はドイツ人移民。時は第一次大戦直後。本作の舞台であるオーストラリアの地においては迫害を受ける立場にある。しかし生前の彼は「皆を赦す」と言う。恨んでいるとそのことを決して忘れないから疲れてしまう、だから赦すんだ。という言いまわしを後から思い出してもうそのセリフが頭の中をぐるぐるまわって離れなくなった。
赦しはめぐりめぐって悲劇そのものの本作の世界を照らし出す。
つまり最悪の選択は最良の選択になりえている…
めちゃくちゃ論理を飛躍させてますが、そんなふうに僕は感じました。
『光をくれた人』
監督:デレク・シアンフランス
出演: マイケル・ファスベンダー、アリシア・ヴィカンダー、レイチェル・ワイズ
製作年:2016年
製作国:アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド
上映時間:133分


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