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ヒューマン

免罪符『ゴールド 金塊の行方』

免罪符『ゴールド 金塊の行方』

Photo by Lewis Jacobs

ドラマや映画には「BASED ON TRUE STORY」いうのがある。いわゆる実録モノに相当する。自伝ものに多く『 ダラス・バイヤーズクラブ』(2013)、『マイ・レフトフット』(1989)はフィクションの部分がないわけではないが少な目だ。一方これより少しゆるいのに 「INSPIRED BY TRUE EVENTS」というのがある。これは文字通り、実際の出来事からヒントを得るということで、役名や設定が違っていたり、一般によりフィクション寄りとなる。『イントゥ・ザ・ワイルド』(2007)、『レナードの朝』(1990)などがある。

『ゴールド 金塊の行方』はアメリカで90年代に起こった株式市場に大混乱をもたらした実際の事件を扱っている。主演はあのマシュー・マコノヒーだ。製作も手掛けている。主役が3代目の金鉱採掘者なんて、アメリカ☓アメリカしてる主人公なのか。そしてもうひとりがエドガー・ラミレス演じる業界の異端児の若手地質学者。2人がインドネシアで史上最大の金鉱を見つけたからと投資を募り、あげく『金のツルハシ賞』なる業界団体の名誉賞まで取った後、事件は起こる。否が応にもリアル、ひとつひとつのセリフも実録モノの迫力がある。ただし何が本当か何が嘘かは判別不能。確かめようと鑑賞後パンフレットを読んだが、そういった記述はなかった。この話の真実は主人公が金鉱にとりつかれた男だということだ。本能的な部分で金をざくざく掘り当てるのが楽しくてしょうがない、死にかけても山を離れない、目がギラついているのだ。マコノヒーの演じる狂気狂乱ぶりは凄まじい。もっとも虚実が明確になれば物語が別の展開を迎えるかもしれない。よくぞ映画化出来たなと思う。

 この作品、エンドロールでは「IN SPIRED BY TRUE EVENTS」とのたまう。つまりフィクションが多めということだが、描かれていることは生々しいったらありゃしないのだ。この作品を見るまで「BASED ON TRUE STORY」と「IN SPIRED BY TRUE EVENTS」にたいした違いはないと思っていたが、前者ならお縄になってしまう。この心がざわつく感じはなんだろうか。このセンテンスがあたかも免罪符のように思えてしまうのだ。

『ゴールド 金塊の行方』
監督:スティーブン・ギャガン
製作:マシュー・マコノヒー
出演:マシュー・マコノヒー、エドガー・ラミレス、ブライス・ダラス・ハワード
主題歌:イギー・ポップ
製作年:2017年
製作国:アメリカ
上映時間:121分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、STAR CHANNEL MOVIES

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1966年生名古屋出身、東京在住。会社員。映画好きが高じてNCWディストリビューター(配給・宣伝)コース、上映者養成講座、シネマ・キャンプ、UPLINK「未来の映画館をつくるワークショップ」等受講。青山学院ワークショップデザイナー育成プログラム修了。転勤で暮らした札幌に映画館を作りたいという野望あり。
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