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仙台に未来の映画館を創る『館長日記』と『シネマレビュー』

サスペンス

実在の中の不在『パーソナル・ショッパー』

(C) 2016 CG Cinema, Vortex Sutra, Sirena Film, Deltafilm, Arte France Cinema

アサイヤスの作品は初めて見たのだが、面白かった。サイコスリラーというジャンル映画でもありながら、モウリーン(クリステン・スチュワート)というひとりの人間としての存在を描いた映画でもある。そんな二面性をバランス良く持っていた。

モウリーンは2つの事に囚われている。死んだ弟からサインを得れば自分の人生を歩めるようになるという期待と、着替えることによって自分ではない誰かになりたい願望。どちらもパッシヴで自己否定的な思考だ。また、彼女が選んだパーソナル・ショッパーという職業は彼女自身がやりたい事ではないし、自分の身体を通して見えない存在とコンタクトをする霊媒という能力も、一種の代行業務とも言える。誰かが存在して初めて自分が存在できている状態にあるモウリーンは、ひたすら不在の弟からのサインを待ち続ける。

だが実際に現れるのは弟からのサインではなく、不可解な相手からだ。弟からのサインを待つ彼女にとってその相手は弟でしか有り得なく、まるですがるように携帯を握りしめ、テキストメッセージを送り返し、時にはネットワークをオフにして意識から遮断しようとする。ショット/リバース・ショットを用いた映画的な会話のシーンがモウリーンと携帯電話の間で行われるのは中々奇妙ではあったが、携帯の小さい画面に全神経が囚われる彼女の姿には見覚えがあり、気づくと自分の姿を重ねていた。そのように、不在なのに存在しているという超自然的な要素と存在しているモウリーンの精神的な不安で、この映画はサイコスリラーとして完成されていく。

複数の要素がお互い関連し合いひとつの映画に混在しているのに全くごちゃごちゃしていない。洗練されているのに挑戦的でもある。怖い怖いと思いながら見ていたけれど、見ることができて本当に良かった。

『パーソナル・ショッパー』
監督:オリヴィエ・アサイヤス
出演:クリステン・スチュワート
製作年:2016年
製作国:フランス
上映時間:105分

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kiki aoki
本当は息を吸うように映画を見たいのだけれど、と思いながら毎晩眠りにつく。

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