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「浮遊感」と「停滞感」『ネネットとボニ』

「浮遊感」と「停滞感」『ネネットとボニ』

なんとなく、気持ちよく、漂っている。『ネネットとボニ』はそんな映画だった。 それは「浮遊感」とでもいおうか。冒頭、少女がプールに浮かんで漂うシーンが印象に残る。真っ赤な服を着たまま水に浸っている少女。その違和感を気にする風もなく、気ままに、たおやかに、虚空を見つめる。 根拠のない心地よさ。それは10代後半の、子供と大人…
死んでたまるか『ソレダケ/that’s it』

死んでたまるか『ソレダケ/that’s it』

bloodthirsty butchers (ブッチャーズ)を初めて見たのは、確か下北沢ClubQueだったか。 ナンバーガールとのツーマンだったが、ある種伝説的なその二つのバントは、もう随分と人気で、ライブハウスの中は身動きが取れないほどだった。 しかし、そんな観客の熱狂や歓喜はどこ吹く風で、当の本人たちは、顔をしか…
生まれてきた意味『かみさまとのやくそく~胎内記憶を語る子どもたち~』

生まれてきた意味『かみさまとのやくそく~胎内記憶を語る子どもたち~』

(C) 2013 copyright 荻久保則男 あなたの最初の記憶はなんだろうか。 多くの人の1番古い記憶は、3歳前後の記憶である。 発達心理学の研究では、3歳くらいまでは、本当に短い時間の記憶しか保持できないとされており、それがそれまでの出来事を思い出せない理由とされてきた。 科学的に証明できないものにぶつかると、…
人生を変えうる映画の力『ゾンビ』

人生を変えうる映画の力『ゾンビ』

(C) 1978 THE MKR GROUP INC. ALL RIGHTS RESERVED. 映画『ゾンビ』を初めて観たのはおそらく中学生の頃。 確かホラー映画好きである兄が、ちょっとイッちゃってる系の映画マニアが経営する街角のレンタルビデオ店から『ゾンビ』を借りてきて、一緒に観たのではなかったか。 そして圧倒され…
終わらない夏休み『セリーヌとジュリーは舟でゆく』

終わらない夏休み『セリーヌとジュリーは舟でゆく』

パリの公園のベンチで、魔術の本を読みながら足で魔法陣なぞを描いているジュリー。 そこに現れ、何やら怪しげな素振りを見せつつ身につけた小物を落として走り去るセリーヌ。 それをジュリーが追いかけ、「不思議の国のアリス」的逃走劇の始まり始まり~ しかしジュリーはなぜセリーヌを追いかけるのでしょうか? モンマルトルの丘のケーブ…
我が麗しのフランス映画『たそがれの女心』

我が麗しのフランス映画『たそがれの女心』

画像出典元:http://unifrance.jp/festival/2015/films/film12 一緒に見た知人が、「最後に登場人物が生きるか、死ぬか」という点を挙げて感想を語っていたことがずっとひっかかっていた。その感想は、自分にとっては何かが違う。少なくとも、あのエンディングにはもっと異なる感動があったはず…
人生の上級者とは。『アドバンスト•スタイル そのファッションが、人生』

人生の上級者とは。『アドバンスト•スタイル そのファッションが、人生』

C)Advanced Style The Documentary Llc. All Right Reserved. Advanced Styleという本をご存知だろうか。 アリ・セス・コーエン氏のファッションスナップブログを書籍化したものである。 特長は、オーバー60’のニューヨーカーが思い思いの服装で自分…
スピルバーグ監督が描き出す「星」が好き『オールウェイズ』

スピルバーグ監督が描き出す「星」が好き『オールウェイズ』

星を見ていると、なんであんなにワクワクしたり、癒されたりしてしまうのだろうか。 私はいつも、スピルバーグ監督が描き出す夜空、星空に心を奪われてしまう。とりわけ今作『オールウェイズ』の夜空は素晴らしく、いつまでも私の心の中に残っている。 それはクライマックス―ヒロインの人生の転機となるシーン。画面いっぱいに広がる星々の壮…
フランス映画史上の最高傑作『天井桟敷の人々』

フランス映画史上の最高傑作『天井桟敷の人々』

中条先生の『フランス映画史の誘惑』(集英社新書)がとても面白かった。とりわけ目をひいたのが、『天井桟敷の人々』の制作過程についてである。 1943年に制作が始まった今作。それはまさしく、第二次世界大戦でナチスドイツに支配されていた時代。自由な映画づくりができない中、映画人たちはそれでも意欲的な作品を求めて力を集結。パリ…
江戸に生きる『百日紅~Miss HOKUSAI~』

江戸に生きる『百日紅~Miss HOKUSAI~』

(C)2014-2015 杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会 原作者杉浦日向子女史との出会いは、NHKの時代劇コメディ”お江戸でござる”だった。 学生時代、祖母のリクエストにより、週に一度の夕食時は、必ずこの番組。 面白かったのは、ドタバタ時代劇の後、文化人による時代考証があるところで…
誰かのためにあり続ける『トイ・ストーリー3』

誰かのためにあり続ける『トイ・ストーリー3』

C)DISNEY / PIXAR 人から「好きな映画は?」と聞かれたとき、私は『自転車泥棒』と答えるようにしている。とはいえ、それも時と場合、相手による。なまじ白黒の旧作映画を挙げてしまうと、「何こいつ。映画通ぶりやがって」と思われてしまう。白けさせてしまう恐れがある。だから相手によって、「『トイ・ストーリー3』が大好…
私が、映画を見始めたきっかけ『自転車泥棒』

私が、映画を見始めたきっかけ『自転車泥棒』

「映画が好き」と周りに言うと、「じゃあ、何が一番好き?」と聞かれることがよくある。これが結構大変で。好きな作品なんてたくさんありすぎて、何にしようか迷ってしまう。ソフト化されていないようなマイナーな作品を挙げたせいで、相手の興をそいでしまってはたまらない。 そんなこんなで、そういうときは「私が、映画を見始めたきっかけ」…
映画のダイナミズムを堪能する『やさしい女』

映画のダイナミズムを堪能する『やさしい女』

画像出典元:http://www.allcinema.net/prog/image_large.php?i=23718&t=0&im 高校生の時に郷里の仙台で観て、全く歯が立たなかった作品。 新宿武蔵野館でリバイバル上映されるということで、あれ以来千何百本だかは映画を観てきたことで、多少は「観る目」が肥…
難解ではない。でも観る側の態度を問われる『さらば、愛の言葉よ』

難解ではない。でも観る側の態度を問われる『さらば、愛の言葉よ』

(C)2014 Alain Sarde – Wild Bunch 本作はゴダール初3Dというのが売り文句ですが、僕はひとまず「犬の映画」と言っておきたい。それくらい犬がいい。犬の立ち姿や動きがいい。 というか、ゴダールが撮りたいように撮ったら世界唯一の犬の映画ができました、という風に言うことはできるかもしれ…
不穏と不安が芸術に昇華した奇跡の傑作『恐怖分子』

不穏と不安が芸術に昇華した奇跡の傑作『恐怖分子』

(C)CENTRAL PICTURES CORPORATION 僕はこの作品を、2015年4月4日に渋谷のイメージフォーラムで観ました。土曜の16時に足を運びましたので多少の混雑は予想してましたが、何と会場は満席!このような企画に人が集まるという状況にまずは拍手です。 冒頭のショットを観るなり、とんでもない傑作に出会っ…
蜂が大きくなってもいいじゃない『スタング』

蜂が大きくなってもいいじゃない『スタング』

大きいことはいいことだ。 『スタング』はそんなスローガンを地で行くような、蜂が巨大化して人間を殺しまくるというだけの映画だ。寓意性や哲学性は皆無。ゼロ。ナッシング。通信簿の所見欄に「落ち着きが足りません」と書かれそうな小学生が考えたとしか思えない、いかにも大雑把な理由から突然変異した巨大蜂たちが、都合よく寄せ集められた…
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