Toggle

ヒューマン

フランス映画史上の最高傑作『天井桟敷の人々』

フランス映画史上の最高傑作『天井桟敷の人々』

中条先生の『フランス映画史の誘惑』(集英社新書)がとても面白かった。とりわけ目をひいたのが、『天井桟敷の人々』の制作過程についてである。
1943年に制作が始まった今作。それはまさしく、第二次世界大戦でナチスドイツに支配されていた時代。自由な映画づくりができない中、映画人たちはそれでも意欲的な作品を求めて力を集結。パリより遠く離れた南部にて、まるでパリであるかのようなセットを組み立てて撮影を敢行したのである。
かくして、1945年、ドイツ軍から解放されたパリのシャイヨー宮殿にて『天井桟敷の人々』のプレミア上映が開催された。「それはいわば、ファシズムにたいするフランス映画の勝利をしるす決定的なできごと」だったのである。
ストーリー自体は、愛に翻弄される人間のすがた、抗しがたい運命に対する人間の悲しさを描いている。それでもこの非想的な世界観は、文学的な雰囲気の中で肯定され、詩的演出によって観る者に感動を与えてくれるのである。
そして、何より映画を見ていて思うことは、画面に映るキャラクター全てが魅力的だということである。それは主演から端役にいたるまで―さらにはおよそ1500人のエキストラが、パリの群衆としてこの舞台を支えてくれているのである。広場、劇場、バー、パレード。その大群衆が生み出す、凄まじいまでの活気。役者のひとりひとりが生き生きと、本当に輝いて見えるのである。
思えば今作がスクリーンにかかるたび、方々まで足を運んだものである。2014年は、三鷹コミュニティシネマ映画祭。そして、飯田橋ギンレイホール。それを最後に、国内でのフィルム上映権が切れてしまったことが惜しまれてならない。いつかまた出会えることを、切に願う。

参考文献:中条省平『フランス映画史の誘惑』集英社(集英社新書)

『天井桟敷の人々』
監督:マルセル・カルネ
出演:アルレッティ
製作年:1945年
製作国:フランス
上映時間:195分

The following two tabs change content below.
大久保 渉
大久保 渉
映画系文筆/映画館勤め/映画祭好き。執筆・編集『映画芸術』『ことばの映画館』『FILMAGA』他/ KAWASAKIしんゆり映画祭、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭、インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン他、各種映画祭にて活動中/現在は神奈川県内の映画館にて勤務中。
Return Top