
(C)2014-2015 杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会
原作者杉浦日向子女史との出会いは、NHKの時代劇コメディ”お江戸でござる”だった。
学生時代、祖母のリクエストにより、週に一度の夕食時は、必ずこの番組。
面白かったのは、ドタバタ時代劇の後、文化人による時代考証があるところで、杉浦日向子女史はコメンテーターとして出演していた。
小学校の先生のような笑みを絶やさぬ丸顔や、やんわりと間違いを指摘する優しさが印象的だった。
後になって、彼女が漫画家だと知った時、彼女の印象と影のある絵や明るいとは言えない物語が噛み合わず、随分違和感を持ったものだった。
彼女が世界一周の旅に出ると言って番組を降板した後、なんだか面白くなくなって、いつの間にか、チャンネルを合わせることはなくなった。
世界一周の旅について、母は優雅ねぇと皮肉っていたが、その時は、まさか彼女がこの世界からも旅立つとは、思っていなかったに違いない。
そんな彼女の芯の強さや潔さが、作品である百日紅から滲み出ている。いかに人間そのものを愛しているかについても。
つっけんどんな割に人を放っておけない お栄や北斎として豪快な絵を描くくせに肝っ玉の小さい鉄蔵が、絵師として日々を過ごす江戸。
粋でお節介で、人情味に溢れている。
もしかしたら、彼女の中の江戸は、夢のように遠い過去でなく、現代に続く日常だったのかもしれない。
彼女の世界に色がつき、動き、話し、時に笑う。
それは鮮やか。
橋の上では、下駄の音が鳴り、行商の声が聞こえ、船頭の歌が響く。
かつて在った日常、人間の営みである。
『百日紅~Miss HOKUSAI~』
監督:原恵一
声の出演:杏、松重豊
制作年:2015年
制作国:日本
上映時間:90分
原作:杉浦日向子「百日紅」
主題歌:椎名林檎「最果てが見たい」


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