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私が、映画を見始めたきっかけ『自転車泥棒』

私が、映画を見始めたきっかけ『自転車泥棒』

「映画が好き」と周りに言うと、「じゃあ、何が一番好き?」と聞かれることがよくある。これが結構大変で。好きな作品なんてたくさんありすぎて、何にしようか迷ってしまう。ソフト化されていないようなマイナーな作品を挙げたせいで、相手の興をそいでしまってはたまらない。

そんなこんなで、そういうときは「私が、映画を見始めたきっかけ」=『自転車泥棒』と言うように決めている。

初見は確か、10年くらい前のことだったろうか。それまではヒーロー系やらディザスター系やら、映画に対して「ワクワク、ドキドキ」という感情しか抱いていなかった。ともすれば、「映画って、割と退屈だな」とさえ思ってしまいがちだったひととき。

そんなときに、ふと今作をDVDで鑑賞。一気に映画の虜となってしまったのである。それは、映画を観て初めて味わった感情、「悲しさ、切なさ」。ただひたすらに、胸がしめつけられてしまったことを覚えている。

舞台は、第二次世界大戦後のイタリア。貧困。失業問題。主人公のお父さんは、なんとか得た職で家族を養っていこうと意気込む。それは自転車で街をまわってポスターを貼るという仕事。しかしその仕事の最中に、自転車を盗まれてしまう。明日をも知れぬ、彼らの暮らし。お父さんと幼い息子が、自転車を必死になって探してまわる。そんなお話である。

制作時期の、まさにその時代と世相を写した物語だったからなのか、はたまた素人俳優、実際に失業で苦しんでいる人たちが画面の中を動き回っていたからなのか。どこか牧歌的な寓話ではあるのだけれども、自転車を探すふたりの姿が本当にもう切なくて、でも、手をつないで歩くその姿がなんとも愛おしくて。

そんなこんなで、『自転車泥棒』。毎年見直してしまうほど大好きな作品なのである。

『自転車泥棒』
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
出演:ランベルト・マジョラーニ
製作:1948年
製作国:イタリア
上映時間:88分

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大久保 渉
大久保 渉
ライター・編集者・映画宣伝。フリーで色々。執筆・編集「映画芸術」「ことばの映画館」「neoneo」「FILMAGA」ほか。東京ろう映画祭スタッフほか。邦画とインド映画を応援中。でも米も仏も何でも好き。BLANKEY JET CITYの『水色』が好き。桃と味噌汁が好き。
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