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青春

生きるということの歌『トイレのピエタ』

生きるということの歌『トイレのピエタ』

(C)2015「トイレのピエタ」製作委員会

古びた木造アパートの、狭いトイレの一室で、壁に画を描く主人公。ひたすらハケを振りまわす。塗料を何度も塗っていく。右へ左へ天井へ。既に塗られたところにも、重ねて重ねて塗っていく。そんな作業を見ていると、何故だか感動してしまう。大げさでいて、恥ずかしく、突拍子もない考えだけど、まるでそれが人生だよと、言わんばかりの勢いに、なんだか胸が震えてしまった。

どんなにクソな日常だろうと、上手くいかない毎日だろうと、それらは絶対無駄じゃない。どうしようもない失敗も、ふりかかってくる理不尽も、恥も理性もプライドも、黒だか白だか色と同じで、なんもかんもが積み重なって、大きな絵画が出来上がる。塗りゃあいいんだ、間違えたって。上から何度も塗っていけ。どんなに過去が辛くとも、どんなに自分が嫌いでも、その悔しさが、その苦しみが、いずれは深みに変わるのだから。

何が出来るか分からない。お手本もなく、モデルもなく、何を描くかは自分次第。例えどんなに器用だろうと、例えどんなに賢しかろうと、イメージ通りに行くか行かぬか、最後は運か、はたまた才か。ただはっきりとしていることは、手を動かせば、何かが変わる。何かが変わって、何かが生まれる。

描きたくなったその時に、自分を信じてハケをとれ。自分のために、誰かのために、果たして何ができるやら。生きてくことは難しい。死ぬことだって難しい。それでも思い立ったなら、夢中になってかけぬけろ。何のためやら、誰のためやら、分からなくても今はいい。いずれは誰かが、あなたのことを、あなたの証を、見てくれるから。

『トイレのピエタ』

監督:松永大司
出演:野田洋次郎、杉咲花、リリー・フランキー、宮沢りえ
製作年:2015年
製作国:日本
上映時間:120分

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大久保 渉
大久保 渉
ライター・編集者・映画宣伝。フリーで色々。執筆・編集「映画芸術」「ことばの映画館」「neoneo」「FILMAGA」ほか。東京ろう映画祭スタッフほか。邦画とインド映画を応援中。でも米も仏も何でも好き。BLANKEY JET CITYの『水色』が好き。桃と味噌汁が好き。
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