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青春

「浮遊感」と「停滞感」『ネネットとボニ』

「浮遊感」と「停滞感」『ネネットとボニ』

なんとなく、気持ちよく、漂っている。『ネネットとボニ』はそんな映画だった。

それは「浮遊感」とでもいおうか。冒頭、少女がプールに浮かんで漂うシーンが印象に残る。真っ赤な服を着たまま水に浸っている少女。その違和感を気にする風もなく、気ままに、たおやかに、虚空を見つめる。

根拠のない心地よさ。それは10代後半の、子供と大人の狭間の、自由だった頃の気持ちを思い起こさせる。たとえ常識から少し逸脱してみても、もはや執拗に咎められることはない。

何かやらなければいけないことがあるわけでもなく、さりとて何をしたいわけでもない。何でもできるという自由を、何もしないことで謳歌する。

ただ、それは決して清々しいだけの日々というわけではなく、「停滞感」とでもいおうか、同時に鬱々とした暗さと曖昧さをもはらんでいるように感じられる。他者との不器用なコミュニケーション。狭い自己世界での安寧。無垢ゆえの愚鈍さ。

ネネットとボニは妹と兄。10代後半。画面は彼らの目に映るものひとつひとつの妙な魅力に惹かれるようにして流れていく。

そして、物語は終盤に向けて、ネネットの妊娠、出産、子供から大人への成長へとうつろっていく。ボニは妹の将来を見据えたり、自分の未来を考えたり、考えなかったり、責任というものをおぼろげながらに意識し始めていくのであった。

…私はいつまでたっても人生の目標が定まらぬまま日々をぼんやりと過ごしているので、今作のような、破滅でも希望でもなく、リアルでもファンタジーでもなく、ただなんとなく、彼らのこれからの明日が明るく見えてしまうような、そんな絶妙なエンディングに出会えると、つい嬉しくなってしまうのである。

『ネネットとボニ』

監督:クレール・ドゥニ
出演:グレゴワール・コラン
製作:1996年
製作国:フランス
上映時間:103分

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くつみがき
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映画活動中/桃と味噌汁が好きです。
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