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ヒューマン

さようなら、ハリー・ディーン・スタントン。『ラッキー』

さようなら、ハリー・ディーン・スタントン。『ラッキー』

(c)2016 FILM TROOPE, LLC All Rights Reserved 鏡の前に立ち、歯を磨くラッキー(ハリー・ディーン・スタントン)の乳首が垂れ下がった骨と皮だけのボディのクローズアップという、ある意味衝撃的なオープニングで本作は始まる。これからいったい何を観させられるのだろうとドキドキするが、ラッ...

暴力に抗う少女の決意『花咲くころ』

暴力に抗う少女の決意『花咲くころ』

(c)Indiz Film UG, Polare Film LLC, Arizona Productions 2013 1992年の春、ジョージア(旧グルジア)。 当時、ジョージアはソ連から独立を果たしたものの内戦状態で、市民は耐乏生活を強いられていた。パンは配給の長い列に並ばないと得ることはできず、電気とガスの供給は...

五体投地を育む日常『ラサへの歩き方 ~祈りの2400km』

五体投地を育む日常『ラサへの歩き方 ~祈りの2400km』

チベット自治区、マルカム県プラ村での村人たちの暮らしぶりが繊細に映しとられる。 薪を燃やす炎のやわらかな光。ヤクの改良種「ゾ」を解体する道具を洗う時に沸き立つ湯気。大麦を炒って粉末状にした「ツァンパ」を器用に手でこねながら和やかに団欒する人々。道端にみっしりと積まれた薪の山… 東京で目にしている日常とまったくかけ離れた...

Synchronicity(シンクロニシティ) 『ギフテッド』

Synchronicity(シンクロニシティ) 『ギフテッド』

(C)2017 Twentieth Century Fox 最近はテレビ朝日で「シルバータイム」と銘うち、昼の12時半から正味1話15分の帯ドラマを放映しています。1作目は2017年4月~9月の『やすらぎの郷』(脚本:倉本聰)でした。そして第2弾が『トットちゃん!』(脚本:大石静)(2017年10月~12月)です。あの...

異界の隙間を満たすピアノの音色と風『タレンタイム~優しい歌』

異界の隙間を満たすピアノの音色と風『タレンタイム~優しい歌』

(C)Primeworks Studios Sdn Bhd まるまる1ヵ月以上レビューを書いておらず、先月11月はついに1本も上げることができなかった。上映会の準備で忙しかったというのはただの言い訳にすぎないが、いよいよ今週末、『タレンタイム~優しい歌』の上映会を開催する。 人種の坩堝であるマレーシアを舞台に描かれる本...

見つめるということ『わたしたち』

見つめるということ『わたしたち』

(C)2015 CJ E&M CORPORATION and ATO Co., Ltd. ALL RIGHTS RESERVED ソンは内気で大人しい女の子。両親は共働きだが経済的には楽ではないようだ。弟の面倒も見てあげなければいけない。 しかし彼女にとって何よりも辛いこと、それは友だちがいないこと。というか...

ファイト!!『スルターン』

ファイト!!『スルターン』

https://www.amazon.com/Sultan-Salman-Anushka-Official-Special/dp/B01JIV76JO  スポーツ観戦における楽しみというのは、例えば、ひいきのチームや選手の活躍をみることでしょう。では感動まで至るのは何か、我々は知らず知らずのうちに選手やチームの立場に自...

詩について『パターソン』

詩について『パターソン』

すPhoto by MARY CYBULSKI(C)2016 Inkjet Inc. All Rights Reserved. 2017年5月、アヤックスを下してEUリーグを制覇したマンチェスター・ユナイテッドの監督ジョゼ・モウリーニョの放った言葉。 “私にとって、チームが素晴らしかったというのもあるが、その根底にある...

普通の自由を求めることは限りなく狂気に近い『歓びのトスカーナ』

普通の自由を求めることは限りなく狂気に近い『歓びのトスカーナ』

(C) 2016 Lotus Productions, Manny Films, Rai Cinema 『テルマ&ルイーズ』への影響が強いイタリアのロードムービー。もし『テルマ&ルイーズ』のふたりが「男性からの自由」を求めているのであれば、この『歓びのトスカーナ』での主人公ふたりは「人としての自由」を求めている。ほとん...

人に話したくなるイタリア映画祭2017『ジュリアの世界』『夜よ、こんにちは』

人に話したくなるイタリア映画祭2017『ジュリアの世界』『夜よ、こんにちは』

イタリア映画祭2017、気軽な気持ちで行ったにもかかわらず、感情を揺さぶられ涙腺ゆるゆるでした。選んだ作品が琴線に触れたのか、5月という季節が感情的にさせたのかわからないけれど。 『ジュリアの世界』 「エホバの証人」信者一家の長女ジュリアが信仰や家族との関わり、恋愛を通して人生に向き合っていく物語。 自由があるからこそ...

ダンスの封印は解かれたけれど…『甘き人生』

ダンスの封印は解かれたけれど…『甘き人生』

(C)2016 ALL RIGHTS RESERVED IBC MOVIE SRL, KAVAC FILM SRL, AD VITAM 母と9歳の息子の幸福そうなダンスで幕を開ける本作。 しかし雪の降りしきる日に母は息子の前から姿を消す。 死因が息子に伝えられることはない。 死因は病気を苦にした投身自殺である。息子のマ...

むちゃくちゃな世界『メビウス』

むちゃくちゃな世界『メビウス』

(C)2013 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved. 母が父の浮気に対する嫉妬に狂って息子のペニスをちょん切ってしまいました、というお話。 ペニスが切られるという感覚に直接に訴えてくる激痛感が強烈だ。 が、それ以上に、自分のコアな部分が永遠に葬り去られてしまったのような精神的なダメ...

人はいつか大人になるのだ『光陰的故事』

人はいつか大人になるのだ『光陰的故事』

(C)CENTRAL PICTURES CORPORATION 台湾の1960~80年代を背景に、小学生→中学生→大学生→若い社会人夫婦と変遷してゆく4つの物語を描いたオムニバス。 第1話は、なぜか周囲の大人とも子供ともウマが合わず孤独感を醸し出している小学生の男の子の話で、胸がキュッと締めつけられるようなビターな一遍...

免罪符『ゴールド 金塊の行方』

免罪符『ゴールド 金塊の行方』

Photo by Lewis Jacobs ドラマや映画には「BASED ON TRUE STORY」いうのがある。いわゆる実録モノに相当する。自伝ものに多く『 ダラス・バイヤーズクラブ』(2013)、『マイ・レフトフット』(1989)はフィクションの部分がないわけではないが少な目だ。一方これより少しゆるいのに 「IN...

最悪の選択が最良の選択になるということ『光をくれた人』

最悪の選択が最良の選択になるということ『光をくれた人』

(C)2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC 子供の授からない夫婦がたまたま流れ着いてきた赤ちゃんを自分の子として育てるという「過ち」を犯すことから、胸の引き裂かれるような悲劇に発展していく本作。 そのまま黙って秘密を墓場まで持っていくという選択肢もあったかと思う。僕もそれでいいん...

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