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台湾の1960~80年代を背景に、小学生→中学生→大学生→若い社会人夫婦と変遷してゆく4つの物語を描いたオムニバス。
第1話は、なぜか周囲の大人とも子供ともウマが合わず孤独感を醸し出している小学生の男の子の話で、胸がキュッと締めつけられるようなビターな一遍。
物語終盤に、お父さんに捨てられた恐竜のおもちゃを同じ年頃の女の子と探しに出かけるという冒険が用意されている。冒険と言っても近所をウロウロするだけなのだが、小学生2人が夜も更けた道をゴミ屋さんを尾行し(見つかって怒られたりし)、おもちゃが捨てられたとおぼしきゴミ捨て場を探し当てる、という一連の過程は彼にとっては人生の一大事だったはずで、これを機に彼の世界がちょっとだけ広がって明日から感じる孤独は少し違った風に捉える事ができるかも、なんて思えてちょっとだけ救われた気持ちになった。
第2話は、女子中学生小芬が恋に目覚め、そして醒めるという、長い人生の中のまばたきのごときほんの一瞬を鮮やかに切り取った鮮烈な一遍。
いつも小芬の傍らに佇む幼馴染の少年がいい。並んで歩くと小芬より明らかに背が低く、黒縁メガネとイガグリ頭といういでたちはまんま子供って雰囲気だ。
小芬が初恋に夢破れ、夜更けの道をフラフラと歩いている時に少年は自転車をぎこちなく漕ぎながら背後からやってくる。彼は小芬といっしょに自転車の練習をしていたのだ。
ここで発する彼の言葉が印象的だ。
「自転車に乗れるようになったらどこにでも行けると思っていた。でもいざ乗れるようになると行きたいところが見つからない」
彼と彼女がその後恋を育むのかどうかはわからない。たぶんない気がする。でも、自転車ですっ転んでしまった少年の肩をやさしく抱いて一緒に家に帰る小芬の背中に、ちょっと大人になった感じを見てとれて嬉しかった。
第3話は、自意識を持て余した大学生がじたばたするけど出口が一向に見えない、というお話。
第4話は、ある朝の社会人夫婦が見舞われたトラブルで右往左往するお話。
大人たちは、第2話の少年が言ったような「行きたいところが見つからない」状態になっているように見えなくもない。でも生きにくい感じが抜けて見ていて楽だ。大人になるってのも悪くないものである。
『光陰的故事』
監督:
1話『小龍頭』:陶徳辰
2話『指望』:エドワード・ヤン
3話『跳蛙』:柯一正
4話『報上名來』:張毅
出演:シルヴィア・チャン、リー・リーチュン、リー・クオシュー
製作年:1982年
製作国:台湾
上映時間:111分
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