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2017年5月、アヤックスを下してEUリーグを制覇したマンチェスター・ユナイテッドの監督ジョゼ・モウリーニョの放った言葉。
“私にとって、チームが素晴らしかったというのもあるが、その根底にあるのは現実主義と謙虚さだよ。ポエムは必要ない”
とあるインタビューに答えた谷川俊太郎の言葉。
“詩は散文とは違って論理で組み立てられているわけではありません。いろんな意味が重層していて捉え方によってはすごく曖昧なものなんです。つまり、詩の「意味」っていうのはあまり重要じゃない。
その辺の道端に咲いている草花みたいな詩を書きたいといつも思っています。草花って、そこに存在しているだけですよね。でも、見ると美しかったり可愛かったりして、見ていると感動することがある。それがどういう感動かって簡単には言葉にできないですよね”
出典元:DMM英会話ブログ
主人公が常に詩作にいそしんでいるだけでなく映画全体に詩が横溢している、あるいは作品そのものが一編の詩ともいえる本作『パターソン』を観て詩についていろいろ考えているうちに先に挙げた2つのテキストに行き当たった。詩に対するあまりにかけ離れたスタンスがおもしろい。
ただひたすら現実における勝利を目指す者に詩は必要ないのかもしれない。が、それでも道端でふっと目に入った草花に目を奪われるようなできごとが彼らの人生に訪れることだってあるだろう。その美しさに接した感動を言葉にできたら人生はどれほど豊かで楽しいものになるだろうか。
いや、そんな美しさなど自分の人生には関係ないね、という人もいるにはいるだろう。それはそれでいいんじゃないでしょうか。もっとも、詩を“ポエム”と言い換えてわざわざ貶めるモウリーニョ(およびインタビューを訳して記事にした奴)のような傲慢さは大嫌いだが。
『パターソン』の主人公は、淡々と過ぎていく毎日を粛々と過ごす。が、そこに訪れる僅かな変化を楽しみ詩を創作し続けている。映画を通じて彼のそんなアティテュードに接することで、世界は常に豊かさと驚きに満ち満ちており、仮に何の変哲もないルーティンをただただ規則的に積み重ねるだけの人生であっても同じ1日などないのだという気付きを得たこと。これこそが僕にとっての『パターソン』の得難い価値である。
『パターソン』
監督:ジム・ジャームッシュ
出演:アダム・ドライヴァー、ゴルシフテ・ファラハニ、永瀬正敏
製作国:アメリカ
製作年:2016年
上映時間:118分


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