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サスペンス

その顔は沈黙していない『沈黙 -サイレンス-』

その顔は沈黙していない『沈黙 -サイレンス-』

表題は『沈黙』だが、顔は雄弁だ。

例えばアダム・ドライヴァー。その黙っていても強烈に主張してくる顔は、今や文芸座で「顔圧ナイト」なる完徹イベントも開かれるほど認知されている顔圧演技法の第一人者、ニコラス・ケイジを凌ぐと言っていい。『スターウォーズ フォースの覚醒』の細かいストーリーは忘れても、森の中で脇腹を叩きながら蜜柑色のライトセーバーをぶん回す、アダム・ドライヴァーの雄姿を覚えている人は少なくないはずである。

猫も杓子もリブートの昨今だが、『ザ・フライ』をリブートするなら、主演はこの男を措いて考えられまい。ジェフ・ゴールドブラムのインパクトに比肩できる、おそらく現在唯一の猛者である。

もっとも、陰と陽しかり、万物には然るべきバランスというものがあって、仮にケイジを相方にキャスティングしたら顔圧と顔圧のエネルギーが衝突し、化学的に大変なことになり、少なくともスクリーンが引き裂けるだろうし、最悪の場合は時空が歪んで地球が滅びてしまうだろう。

そこはさすが、百戦錬磨のスコセッシだ。人類滅亡のリスクを負うことなく、対抗馬には人好きのするアンドリュー・ガーフィールドを配してきた。

が、この男もまた一筋縄ではいかない俳優だ。一見、虫も殺せないような優男風だが、『ハクソー・リッジ』でもそうであったように、この男は実は狂気と表裏一体である、体の奥底からにじみ出る盲目的信念を漂わせるのが抜群に巧い。

その点、アダム・ドライヴァーは表向きの顔は強いが、心の脆さを感じさせる役者だ。先の。『スターウォーズ フォースの覚醒』もそうだが、実際にそういった役柄が多いような気がする。逆にアンドリュー・ガーフィールドからは宙吊りにされても、銃口を突き付けられてもニヤニヤ笑っていそうな、得体の知れない信念が伝わってくる。敵にまわして厄介なのは、もちろん後者だ。

『沈黙』では、この対照的なふたりの相互作用がすばらしく、彼らが出ているシーンを観ているだけでご飯が進みそうである。スコセッシにはぜひとも、彼らだけのスピンオフ作品『ちょっと沈黙』を撮ってもらいたいものだが、それはさすがにあの世の遠藤周作が激高するかもしれない。

ちなみに、終始神経質そうに顔筋をピクつかせながら演技するイッセー尾形も、狂気がほとばしっていて目が離せない。

リーアム・ニーソンがスティーブン・セガールにしか見えないのはご愛敬か。

『沈黙 -サイレンス-』
監督:マーティン・スコセッシ
出演:アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライヴァー、リーアム・ニーソン、イッセー尾形
製作年:2016年
製作国:米国
上映時間:159分

(C) 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

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とら猫 aka BadCats
メジャー系からマイナー系まで幅広いジャンルの映画をこよなく愛する、猫。本サイトでは特にホラー映画の地位向上を旗印に、ニンゲンとの長い共存生活の末にマスターした秘技・肉球タイピングを駆使してレビューをしたためる。商業主義の荒波に斜め後ろから立ち向かう、草の根系インディー映画レーベル“BadCats”(第一弾『私はゴースト』)主宰。twitter@badcatsmovie
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