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ヒューマン

暴力に抗う少女の決意『花咲くころ』

暴力に抗う少女の決意『花咲くころ』

(c)Indiz Film UG, Polare Film LLC, Arizona Productions 2013

1992年の春、ジョージア(旧グルジア)。
当時、ジョージアはソ連から独立を果たしたものの内戦状態で、市民は耐乏生活を強いられていた。パンは配給の長い列に並ばないと得ることはできず、電気とガスの供給はたびたび停止する。そんな厳しい環境下、市民はストレスと苛立ちを強めている。大人たちだけでなく子供たちでさえも、怒りをぶちまけ、大声を張り上げ、周囲と喧嘩を繰り返している。
画面内は暴力に満ち満ちている。悪戯、イジメ、恐喝、誘拐…
一瞬たりとも油断ならぬ世界に生きる人々。子供たちとて例外ではなく、常に暴力に晒されている。

主人公エカは悪ガキの待ち伏せを受け、ナイフで脅され、配給の列に苦労して並んで得たパンを泥水の中に捨てられてしまう。エカの親友ナティアは「なぜ反撃しないのか」となじるが、エカは黙って暴力を受け入れる。

ナティアは、淡い恋心を抱く少年から護身用の拳銃をプレゼントされる。エカはナティアが拳銃を所持することを快く思わない。いよいよナティアが拳銃を使って人を殺しそうな展開になった時には、先回りしてその拳銃を取り上げ、湖に捨ててしまう。

いつもの如くパンの配給に並ぶエカとナティア。そこでナティアは、かねてから彼女をつけ狙っていた男に車で連れ去られてしまう。列に並ぶ大人たちはパンを得ることしか頭になく、ナティアを助ける者など誰もいない。「恥を知れ」となじるエカは無情にも大人の男に殴打されてしまう。

その殴打による目の周りの痣が消えぬまま、エカはナティアの結婚式(誘拐の果ての恐喝婚!)に参列する。
「シャラホ」という男性商人の祝宴の振付を踊るエカ。式の参列者全員に対してナティアの結婚に対する抗議を、みずからの肉体の躍動によって表現したその舞踊は、わたしの心を揺るがさずにおかなかった。

エカの父は刑務所に収監されている。
家族は時々面会に出かけるが、エカは決して同行しようとしない。父が同級生の子の父親を殺したという噂があるからだ。彼女はとことん反暴力のアティテュードを貫いているのだ。
しかしラスト。エカはひとりバスを乗り継ぎ、遠く離れた刑務所に向かう。
父との対面を前に映画は幕を下ろすので、彼女の心情は伺い知れない。が、少女の秘めた決意が余韻として残る印象的な幕引きに、彼女の未来に訪れる幾つもの困難を予想させつつ、それでもこれからも小さな決意を重ねて生きて行くであろう一人の少女の生き様を想って、胸が熱くなった。

『花咲くころ』
監督:ナナ・エクフティミシュヴィリ、ジモン・グロス
出演:リカ・バブルアニ(エカ)、マリアム・ボケリア(ナティア)
製作年:2013年
製作国:ジョージア、ドイツ、フランス
上映時間:102分
オフィシャルサイト

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館長
館長
仙台で映画館を開業して、生まれ故郷の発展に貢献したいと思っている50歳です。 50年間、経済的にも精神的にも映画に救われ続けてきたという思いがあります。 ミニシアターを作ることで、ささやかながら映画に恩返ししたいと思っています…といっても何か秘策があるわけではまるでなし。 今できることは、とにかく思いを発信し続けていくだけです!
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