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サスペンス・ミステリー

救われるとは何なのか『無垢の祈り』

救われるとは何なのか『無垢の祈り』

© YUMEAKI  HIRAYAMA  /  TORU  KAMEI ひたすら辛い。痛い。苦しい。 それが『無垢の祈り』を観て、最初に湧き上がってきた感情だ。そしてそうした感情が一巡りし、脳内がリセットされた瞬間に突き刺さってきたのは「罪悪感」だった。 なぜなら、本作で描かれているフィクションは、今この瞬間にも、日本...

地獄は続くけれど…『淵に立つ』

地獄は続くけれど…『淵に立つ』

(C)2016映画「淵に立つ」製作委員会/COMME DES CINEMAS 観終わった後にわき起こるやるせなさをどこにどう向けたらいいのかわからず途方に暮れてしまった。「やるせなさ」という表現が適切かどうかも自信がない。しかし愉快な感情が起きないことだけは間違いない。 慎ましやかに暮らす家族が得体の知れない男の闖入を...

教科書では学べない人生の妙味『教授のおかしな妄想殺人』

教科書では学べない人生の妙味『教授のおかしな妄想殺人』

Photo by Sabrina Lantos (c)2015 GRAVIER PRODUCTIONS, INC. 人生に絶望した哲学教授。 色男ホアキン・フェニックスがお腹ぽっこり(役作りだろうか?だとしたら大したものだ)で演じており、「もうボク体型なんてどうでもいーんだよねー」感がよく出ている。実際教授は大学構内で...

破壊の不快、なぜか爽快。『ノック・ノック』

破壊の不快、なぜか爽快。『ノック・ノック』

(C)2014 Camp Grey Productions LLC 僕はホラーは大好きだが、過度なスプラッターは苦手である。 そういうわけで今までイーライ・ロスを避けてきたわけだが、断片的に得た事前情報を検分するに血の量は控え目っぽいなと当たりをつけて『ノック・ノック』を観に出かけた次第である。 結果、血はほとんど流れ...

子供に導かれて見えた世界『ルーム』

子供に導かれて見えた世界『ルーム』

(C)ElementPictures/RoomProductionsInc/ChannelFourTelevisionCorporation2015 人は大なり小なりコントロールし合って生きているものだということは頭ではわかっているが、他人からあからさまにコントロールされていることが自覚される状況は僕にとって最悪の悪夢...

突き動かされるままに―『マジカル・ガール』

突き動かされるままに―『マジカル・ガール』

(c)Una producción de Aquí y Allí Films, España. Todos los derechos reservados 「『魔法少女まどか☆マギカ』みたいな映画ってこと?」「好き好きオレ好きアレ好き萌えちゃん少女にキュンキュンきちゃってでもちょっとマジな濃い展開もあってあの激ヤバイ運...

ベーコン特盛りでお願いします『コップ・カー』

ベーコン特盛りでお願いします『コップ・カー』

Copyright © COP CAR LLC 2015 ベーコンからケヴィン・ベーコンのファンになった人は少なくないはずだ。 かくいう私も、最初は“ベーコン”という名字の響きに惹かれて興味を持ち、かの怪物ホラーの名作『トレマーズ』でハートを鷲づかみにされた。当時は『フットルース』で青春スターの座を射止めたイケメンが、...

秘密の行き着く先『マジカル・ガール』

秘密の行き着く先『マジカル・ガール』

(c)Una producción de Aquí y Allí Films, España. Todos los derechos reservados 秘密。 はっきり言って、何の秘密も抱えずに生きている人なんていないだろう。普段はしがないサラリーマンが実は某国のスパイであったという大きな秘密から、外ではダンディに...

余白にずっぽりハマる『マジカル・ガール』

余白にずっぽりハマる『マジカル・ガール』

(c)Una producción de Aquí y Allí Films, España. Todos los derechos reservados 『マジカル・ガール』の魅力は、切り口の設定のしかたによって様々な捉え方が可能な点であろう。 で、僕が設定した切り口は「愛」である。 なぜならば、本作の円環構造がそれ...

破滅の恐怖と快楽(?)『コズモポリス』

破滅の恐怖と快楽(?)『コズモポリス』

デヴィッド・クローネンバーグの近作に麻薬的にハマっている。 インテリと変態が絶妙に共存していて、端正な作風ながらグロい。 イヤだヤメて~と思いながらも暗黒面にひきずりこまれていく感覚に、なぜか忘れがたい感興を催されしまうのだ。 『コズモポリス』は、独特のリズムと陰影の濃い美しい映像がスタイリッシュだが、人物の内面へ内面...

イジワルな哲学『石の微笑』

イジワルな哲学『石の微笑』

主人公フィリップ(ブノワ・マジメル)は真面目を絵に描いたような好青年。 家庭内の瑣末ないざこざを諌めたり、母に対して不誠実な母の恋人に苛立ったりとなんだか気が休まらないけど、小さなリフォーム会社の営業マンとして気忙しいながらもマジメに働いている。 パっとしないがごく普通の生活を維持している。 しかし一方フィリップは、亡...

山道で遭遇するイケメンにはご注意『サバイバル・ドライブ』

山道で遭遇するイケメンにはご注意『サバイバル・ドライブ』

つかみはオッケー。 じゃないけれど、玉石混交はなはだしいホラーの銀河を長いこと漂流しているうちに、今では冒頭の5分くらい見れば、その作品のあり/なしを見抜けるようになった。 『サバイバル・ドライブ』は元々、近所の某ツタヤで5枚借りるとお安くなるというキャンペーンを展開していて、お目当ての映画と一緒に数合わせのためだけに...

暴力の応酬を直視して炙り出されるもの『殺されたミンジュ』

暴力の応酬を直視して炙り出されるもの『殺されたミンジュ』

(C)2014 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved. ミンジュは冒頭に殺される女子学生の名前だが、韓国語では民主主義という意味があるそうだ。 が、そういう観念と結びつけて映画を語るとさももっともらしい語りになるので、それはしません。 というかできません。 僕にとっての『殺されたミン...

自分の物差しで勝手に愉しもう!『女が眠る時』

自分の物差しで勝手に愉しもう!『女が眠る時』

僕が大好きな「ロスト・イン・トランスレーション」と同じくホテル滞在ムービー。ラストが都市の雑踏というのも同じだ。 僕は本作を「ロスト~」と同様心ゆくまで堪能した。 巷では”難解”との評判を聞く。 そりゃそうだろう。ほぼ全編、スランプに陥った作家の、想像力と書く活力を得るための妄想のシーンなのだから((注)館長解釈)。マ...

男は黙って背中で語れ『グッドナイト・マミー』

男は黙って背中で語れ『グッドナイト・マミー』

男は黙って高倉健。 寡黙さが普遍的美徳であるかはさておき、語られないからこそ、逆に好奇心をかき立てられるという心理自体はさして特異なものではない。 これは映画も同じで、そこでそれ、言うかなーみたいな蛇足なひと言によって感動のシーンが台無しになることは珍しくない。誤解を恐れずに言えば、なんたら製作委員会が絡んでいる大作系...

吹っ切れたシャマランが握る剛球寿司『ヴィジット』

吹っ切れたシャマランが握る剛球寿司『ヴィジット』

こないだの『サイン』のレビューで、本作はシャマランの原点回帰であると嘯いてみたが、いやしくもシャマラニストを自称する者としてこれは浅薄な考察であった。ちょっと頭が沸いてた。魂抜けちゃってた、軽く。 んだってばシャマランに原点回帰などありえない。なぜならこの男はシャリとネタの組み合わせから生まれる小宇宙、映画という名の寿...

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