(C)2014 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.
ミンジュは冒頭に殺される女子学生の名前だが、韓国語では民主主義という意味があるそうだ。
が、そういう観念と結びつけて映画を語るとさももっともらしい語りになるので、それはしません。
というかできません。
僕にとっての『殺されたミンジュ』は、暴力そのものをこれでもか!と見せつけられる映画だ。
謎の武装集団が、ミンジュ殺害事件の当事者とおぼしき男たちを次々に拉致して苛烈な拷問を加え、自供をとっていく。
最初の拷問には何本もの釘を打ち込んだバットが使用される。
キム・ギドクはこの拷問具のイメージからこの映画の着想を得たそうだ。
いかにも痛そうで、残虐性を象徴したこの物体はラストシーンでも使用される。
さて、その「釘バット」による殴打を皮切りに、目を背けたくなるようや暴力が展開されていくわけだが、一応僕はこの武装集団に感情移入しながら観て行った。
彼らの仕掛ける数々の拷問は、ミンジュ殺害事件という、組織的計画的に遂行されることで隠蔽かつ正当化されている「最も忌まわしい」暴力を罰するものとしてとりあえずは捉えられるからだ。
(とりあえずと書いたのは、ラストに至るまでこの武装集団の目的は曖昧模糊としてよくわからないからだ)
暴力を罰する暴力。
当初は若干の高揚感が生じたことを正直に告白しておこう。
しかし結局それはカタルシスをもたらさない。
暴力の応酬はむごたらしく、虚しい。
ただそれだけなのだ。
そういう意味でこの映画の釈然としない着地は必然である。
いや、見た直後は気持ち悪くてしょうがないですよ。全然納得できないです。
でも観てから時間が経って振り返った今、『殺されたミンジュ』は、人間(すなわち自分)は無意識的に暴力を行使してしまう愚かな生き物であり、また、理由を見つけては暴力を行使する汚い存在だ、ということを自覚させてくれる意味で、僕にとって重要な作品だ。
最後に余談だが、キム・ヨンミンの「1人8役」の演出意図がまったくわからない。
わからないのだが、なんか「それはあり」と思わせてしまうキム・ギドクの力技はすごいと思う。
次回作もついつい期待してしまう。
『殺されたミンジュ』
監督:キム・ギドク
出演:マ・ドンソク、キム・ヨンミン
製作年:2014年
製作国:韓国
上映時間:122分
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