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サスペンス

破壊の不快、なぜか爽快。『ノック・ノック』

破壊の不快、なぜか爽快。『ノック・ノック』


(C)2014 Camp Grey Productions LLC

僕はホラーは大好きだが、過度なスプラッターは苦手である。
そういうわけで今までイーライ・ロスを避けてきたわけだが、断片的に得た事前情報を検分するに血の量は控え目っぽいなと当たりをつけて『ノック・ノック』を観に出かけた次第である。

結果、血はほとんど流れなかった。その代り別の面で大いなる不快感を蒙ることになった。
不快の主要因は「破壊」である。
それだけなら本作はさして心に残らなかったかもしれない。
本作の僕にとっての魅力というか重要性は、徹底した破壊の先に不意に現れる「爽快感」のようなものだ。

金持ちばかりが住む地域に建てられた見るからに素敵な家の内部をカメラが這い進むところから映画は始まる。
趣味のいい家具、引き伸ばされて貼り出されている幸せそうな家族の写真、所狭しと飾られたアート…
このカメラワークは劇中で何度か反復され、最後に破壊されつくされた家の中を同じように彷徨う。この光景が僕にとっては非常に印象的だった。

パパ(キアヌ・リーヴス)は建築家。この家を設計したのももちろんパパ。
前職はDJ…なんという華麗なる転身!
ママはアーティスト。家中に飾られたアートはママの作品なのでした。
今夜はママと子供たちが遊びに出掛けているので、パパは家で一人でお仕事。高価そうなオーディオセットから大音量で音楽を流しっぱなしにして建築のデザインにいそしんでいます。

仕事は順調。夫婦とも仕事を心から楽しんでいる。家族もみんな仲良し。
絵に描いたような理想的なライフスタイルだ。
しかしそれは完膚無きまでに叩き壊されることになる。

実に胸の痛む光景である。
しかしよく考えてみよう。
持ってるもの、築きあげたものはいつかは失うものだ。
本作ではあまりに急激に破壊されてしまったのでショッキングではあるが、我々は元々「何も持っていない」し、獲得したものはいつしか失うのだ。

「持つ」と、「失う」恐怖に怯えなくてはならない。
だったらパパが失ったもの…家具・アート・レコード・家族・社会的ステイタス…など、いつ失ってもOKだと構えていればいい。

…というふうには現時点の僕はまるで達観できません。
だから『ノック・ノック』は全面的に不快でした。
が、一抹の爽快感が残ったのもまた事実なのである。

『ノック・ノック』
監督:イーライ・ロス
出演:キアヌ・リーヴス、ロレンツァ・イッツォ、アナ・デ・アルマス
製作年:2015年
製作国:チリ、アメリカ
上映時間:99分

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館長
館長
仙台で映画館を開業して、生まれ故郷の発展に貢献したいと思っている50歳です。 50年間、経済的にも精神的にも映画に救われ続けてきたという思いがあります。 ミニシアターを作ることで、ささやかながら映画に恩返ししたいと思っています…といっても何か秘策があるわけではまるでなし。 今できることは、とにかく思いを発信し続けていくだけです!
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