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ヒューマン

教科書では学べない人生の妙味『教授のおかしな妄想殺人』

教科書では学べない人生の妙味『教授のおかしな妄想殺人』


Photo by Sabrina Lantos (c)2015 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

人生に絶望した哲学教授。
色男ホアキン・フェニックスがお腹ぽっこり(役作りだろうか?だとしたら大したものだ)で演じており、「もうボク体型なんてどうでもいーんだよねー」感がよく出ている。実際教授は大学構内でもポケットに忍ばせたスキットルでウイスキーを常飲しており、まるでやる気がない。

そんな教授が、悪い奴を殺害することを思いついて活気を取り戻していく。
要するに奇人変人。
この作品の原題は『IRRATIONAL MAN』。訳すと「不合理人間」だ。

変人というのは時に魅力的に映るものなのか、そんな教授に教え子の女子大生(エマ・ストーン)が興味を持つ。
美人で理知的で勉強熱心。家族は裕福で文化度も高く、家族仲も良好。彼氏はイケメンで好青年。
模範的な女子大生像の要素をすべてひっつけたかのようなありえないキャラ設定。完全無欠のリア充などと揶揄したくなる(僕はね。ひねくれているのでね)。

この美人でイノセントな女子大生はいかにもボランティア精神にあふれているように見え、案の定「教授を立ち直らせよう」などという気を起こし、やがて恋心を抱いていく。
人生全般においてやるきゼロの教授はそんな気持ちを当然受け取ることはないが、件の思いつきから突如活力が湧き始め、恋愛にも積極的になる。
女子大生はそれを愛が実った結果と受け取るわけで、ここに決定的なすれ違いを抱えたカップルが成立してしまう。

とにかく筋運びが滑らかすぎてあれよあれよと乗せられてしまうのだが、要はこの悲しいすれ違いをまざまざと見せつけられるというのが本作の眼目であると僕は思う。
そして結局、不合理人間がこの世に居場所を持つことは許されないし、リア充女子大生の順風満帆人生は停滞を余儀なくされる。
悲しい人間模様を軽やかな筆致で魅せられる『教授のおかしな妄想殺人』は、実に底意地が悪い困った作品である。同時におもしろいんだからまた困ったものである。

円熟を通り越して老練の境地に至ったウディ・アレンの手練手管を、存分に味わっていただきたい。

『教授のおかしな妄想殺人』
監督:ウディ・アレン
出演: ホアキン・フェニックス、エマ・ストーン、パーカー・ポージー
製作年:2015年
製作国:アメリカ
上映時間:95分

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館長
館長
仙台で映画館を開業して、生まれ故郷の発展に貢献したいと思っている50歳です。 50年間、経済的にも精神的にも映画に救われ続けてきたという思いがあります。 ミニシアターを作ることで、ささやかながら映画に恩返ししたいと思っています…といっても何か秘策があるわけではまるでなし。 今できることは、とにかく思いを発信し続けていくだけです!
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