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サスペンス・ミステリー

秘密の行き着く先『マジカル・ガール』

秘密の行き着く先『マジカル・ガール』


(c)Una producción de Aquí y Allí Films, España. Todos los derechos reservados

秘密。

はっきり言って、何の秘密も抱えずに生きている人なんていないだろう。普段はしがないサラリーマンが実は某国のスパイであったという大きな秘密から、外ではダンディに決めている紳士が家では全裸に葉っぱ一枚で過ごしているという小さな(小さくはないか)秘密まで、知らなければ知らないで個々の生活に支障はないのだが、ひとたび知ってしまったら当人ひいてはその周囲にまで大なり小なりの影響を与えるのが“秘密”という存在の面白いところでもあり、恐ろしいところでもある。

『マジカル・ガール』の登場人物も様々な秘密を抱えている。そのいくつかは例えば日記の盗み読みを通じて暴露され、ストーリーを駆動していくわけだが、そうした秘密の多くは真実が仄めかされるだけで詳しくは語られない。

そういう意味で本作はリアルだ。結局のところ、秘密の多くは実生活においてほとんど語られることはない。あるいは語られたとしても秘密とは気づかない。

そして大半の秘密は知ってしまうよりも知らないでいたほうが、幸せだったりする。

だが、秘密が厄介なのは得てして孤独を呼ぶということだ。がために、その孤独に耐えきれず自ら秘密を明かし、周囲を不幸に陥れる者もいれば、そうした孤独を善意から癒そうとした結果、触れてはならない秘密に触れ、破滅へと向かう者もいる。

そう考えると「トカゲ部屋」の秘密が最後まで明かされないのは、監督の親心とも言える。なぜなら、その秘密は、知ってしまった者の常識を根底から覆してしまいかねない、剣呑な代物であるかもしれないからだ。

つまり、秘密を知るという行為は本質的に“危険”であることを、監督は「トカゲ部屋」の存在を介して伝えようとしているのではないかしらんと、私なんかは愚考する。

それでも少女の秘密から始まったストーリーは最終的に、一見すると残酷だが、実際にはタイトルどおり“マジカル”な救いを少女にもたらすことになる。

陰ではすさまじい代償が支払われているわけだけれども。

『マジカル・ガール』
監督:カルロス・ベルムト
出演:バルバラ・レニー、ルイス・ベルメホ、ホセ・サクリスタン
製作年:2014年
製作国:スペイン
上映時間:127分

 

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とら猫 aka BadCats
メジャー系からマイナー系まで幅広いジャンルの映画をこよなく愛する、猫。本サイトでは特にホラー映画の地位向上を旗印に、ニンゲンとの長い共存生活の末にマスターした秘技・肉球タイピングを駆使してレビューをしたためる。商業主義の荒波に斜め後ろから立ち向かう、草の根系インディー映画レーベル“BadCats”(第一弾『私はゴースト』)主宰。twitter@badcatsmovie
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