
ベーコンからケヴィン・ベーコンのファンになった人は少なくないはずだ。
かくいう私も、最初は“ベーコン”という名字の響きに惹かれて興味を持ち、かの怪物ホラーの名作『トレマーズ』でハートを鷲づかみにされた。当時は『フットルース』で青春スターの座を射止めたイケメンが、知能指数の低いB級の役を全力で演じる姿に猛烈な役者魂を感じたものだが、実際は本人が率先して、喜々として阿呆な役を演じていたと知ったのは後になってからである。
ちなみに『トレマーズ』は自ら主演・製作総指揮を務め、TVシリーズとしてリブートするつもりらしい。あんたどんだけ好きなんだよ、『トレマーズ』が。
そんなベーコン氏がやはり製作総指揮を買って出た本作。この事実だけで期待値は否応にも高まるわけだが、我らがベーコン氏はまず、無駄にでかいフォントにファイアパターン、そこへ不穏なテーマ曲がかぶさる“ダサカッコイイ”タイトルシークエンスによって世のベーコンマニアを歓迎し、続いて主役の少年2人による、脳みそをろ過してバカだけが残ったような絶望的にレベルの低い会話によって愉快な90分を確約してくれる。
こうして客席を温めたのち、満を持して真打ち登場。本作では極悪非道だが少々間の抜けた汚職保安官というキャラを引っ提げて、だだっ広いアメリカの荒野に響きわたるような笑いを何度も提供してくれる。
なかでも靴ひもを使って、外から車のカギを開けようとするシーンは最高だ。ベーコンファンならこのシーンだけで飯が三杯は食えるだろう。
そして悪ガキ2人のキャラ分けも絶妙。一人は粋がったオラオラ系、もう一人は控えめな巻き込まれ系と、ジャイアンとスネオの関係性を彷彿させるが、頭の悪さはスケールが違う。「バカをやることがクール」という理念に基づく彼らの暴れっぷりはどこまでも無知で愚鈍で、本気の失笑を漏らしてしまうほど真に迫っている。
さすがにツボを心得ている男ベーコン。そのB級映画への熱意は本物である。
『コップ・カー』
監督:ジョン・ワッツ
出演:ケヴィン・ベーコン、カムリン・マンハイム
製作年:2015年
製作国:アメリカ
上映時間:88分


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