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ヒューマン

エアロビクス!『世紀の光』

エアロビクス!『世紀の光』

(C)2006 Kick the Machine Films 冒頭またはラストのカットが印象的な映画というのは数多くある。 が、『世紀の光』のようにその両方とも鮮明に記憶に残ってる映画は珍しい。 もっともこれは僕の記憶力の問題である。 日々いろんなことを忘れて生きているが、せめて映画くらいは記憶にとどめておきたいものだ...

史上もっともワイルドな映画『ロアー』

史上もっともワイルドな映画『ロアー』

唯一無二。 今や常套句として使われすぎてその価値を失っている形容詞だが、1981年製作の幻の動物アドベンチャー『ロアー』は掛け値なしの「唯一無二」の映画だ。 だって真似できないもの。誰にも。 こうした動物映画では通常、動物たちを人間の意図に合わせて演じさせることに骨を折るケースが多いが、『ロアー』の場合、そもそも動物た...

生と死の両方の喜び『アンジェリカの微笑み』

生と死の両方の喜び『アンジェリカの微笑み』

(C)Filmes Do Tejo II, Eddie Saeta S.A., Les Films De l’Après-Midi,Mostra Internacional de Cinema 2010 『岸辺の旅』でも書いたが、僕は死をどうしようもなく恐れ、同時に、いやそれゆえに”死”に並々な...

二度と戻らぬ少女を映画に刻む『天使が消えた街』

二度と戻らぬ少女を映画に刻む『天使が消えた街』

”映画作りに苦悩する映画監督”の映画である。 同じ題材で真っ先に頭に浮かぶのが、フランソワ・トリュフォーの「アメリカの夜」。 撮影現場の混乱と活気を描いた、映画作りは大変だけど、”それでも映画を作り続ける”という力強い映画愛に満ちた作品だ。 「天使が消えた街」はそれとはまったく趣が異なる。 主人公の映画監督トーマスは、...

不意打ちのショックと感動。『母と暮せば』

不意打ちのショックと感動。『母と暮せば』

(C)2015「母と暮せば」製作委員会 衝撃作である。 序盤と終盤にとんでもないショックが用意されている。 「母と暮せば」は、細やかな日常描写の積み重ねによって描かれる「具」が、序盤と終盤の衝撃という「生地」に挟まれたサンドウィッチのような作品だ。 まず序盤。長崎における原爆投下シーン。 古今東西、映画の中ではさまざま...

「愛してる」を言いたくて『モーツァルトとクジラ』

「愛してる」を言いたくて『モーツァルトとクジラ』

© movpins 題名である『モーツァルトとクジラ』とは、ハロウィンで仮装をした主人公ドナルド(ジョシュ・ハートネット)とイザベル(ラダ・ミッチェル)のことを表す。 「いつだって僕はパレードの傍観者なんだよ」 ハロウィンの夜。煌びやかに打ちあがる花火や、手をつなぐ恋人たち。そのような風景を背に、俯きながら主人公のドナ...

心の中で鳴り響く音楽『SOMEWHERE』

心の中で鳴り響く音楽『SOMEWHERE』

中学生の頃、テニス部の市内大会で優勝したときに「世界が真っ白になった」ような感じがした。 高校生の頃、生まれて初めて付き合った同級生と夏祭りでそっと手を繋いだ瞬間に「甘いメロディーが流れ始めた」ような感じがした。 今でもなんとなく思い出す、その瞬間、その感覚。その他にも、10代の頃には何やかんやと「心の中」が劇的に彩ら...

孤独を絵として愉しむ「サイの季節」

孤独を絵として愉しむ「サイの季節」

孤独- 世の人々が恐れる最たるもののひとつであろう。 現在のSNS隆盛のご時世下において、人々はあらゆる方向につながっているように見えて実は全然つながっていない。わざわざここで僕が指摘するまでもなく、多くの人が実感していることだと思う。 一方、映画を評するさいに“この映画は現代人の孤独をえぐり出している~”などという、...

トランシネマ第2回上映会記念『シンプル・シモン』合評

トランシネマ第2回上映会記念『シンプル・シモン』合評

トランシネマが仙台で開催する、第2回目の上映会の日が近づいてきました! 今回は、上映会の開催と「トランシネマWEB」の開設をダブルで記念して、上映会で上映する「シンプル・シモン」をレビュアー全員で合評しました。 レビュアーによるさまざまな視点によって「シンプル・シモン」の魅力があらゆる角度から語られています。 どうぞ楽...

死から照射される生の喜び。『岸辺の旅』

死から照射される生の喜び。『岸辺の旅』

©2015「岸辺の旅」製作委員会/COMME DES CINÉMAS 私は、50歳を前にして未だに「死」が怖い。 誰しも、子供の頃に初めて「死の概念」を知って恐怖におののいた経験があると思う。しかしいずれその恐怖と折り合いをつけていくか、もしくは単に忘れていく。それが普通の大人だ。そういう意味で私は大人になりきれていな...

孤独に寄り添い続けるカメラ『ヴィオレット』

孤独に寄り添い続けるカメラ『ヴィオレット』

画像出典元:http://unifrance.jp/festival/2015/films/film08 『ヴィオレット』の主人公は、己のことを「醜い女」といって忌み嫌う。誰からも愛されない。必要とされない。それは自分が醜いから。激しい孤独の中、ひとり苦悩を続けていくすがたが印象的だった。 されど、私は彼女が一人ぼっち...

スピルバーグ監督が描き出す「星」が好き『オールウェイズ』

スピルバーグ監督が描き出す「星」が好き『オールウェイズ』

星を見ていると、なんであんなにワクワクしたり、癒されたりしてしまうのだろうか。 私はいつも、スピルバーグ監督が描き出す夜空、星空に心を奪われてしまう。とりわけ今作『オールウェイズ』の夜空は素晴らしく、いつまでも私の心の中に残っている。 それはクライマックス―ヒロインの人生の転機となるシーン。画面いっぱいに広がる星々の壮...

フランス映画史上の最高傑作『天井桟敷の人々』

フランス映画史上の最高傑作『天井桟敷の人々』

中条先生の『フランス映画史の誘惑』(集英社新書)がとても面白かった。とりわけ目をひいたのが、『天井桟敷の人々』の制作過程についてである。 1943年に制作が始まった今作。それはまさしく、第二次世界大戦でナチスドイツに支配されていた時代。自由な映画づくりができない中、映画人たちはそれでも意欲的な作品を求めて力を集結。パリ...

私が、映画を見始めたきっかけ『自転車泥棒』

私が、映画を見始めたきっかけ『自転車泥棒』

「映画が好き」と周りに言うと、「じゃあ、何が一番好き?」と聞かれることがよくある。これが結構大変で。好きな作品なんてたくさんありすぎて、何にしようか迷ってしまう。ソフト化されていないようなマイナーな作品を挙げたせいで、相手の興をそいでしまってはたまらない。 そんなこんなで、そういうときは「私が、映画を見始めたきっかけ」...

映画のダイナミズムを堪能する『やさしい女』

映画のダイナミズムを堪能する『やさしい女』

画像出典元:http://www.allcinema.net/prog/image_large.php?i=23718&t=0&im 高校生の時に郷里の仙台で観て、全く歯が立たなかった作品。 新宿武蔵野館でリバイバル上映されるということで、あれ以来千何百本だかは映画を観てきたことで、多少は「観る目」が肥...

難解ではない。でも観る側の態度を問われる『さらば、愛の言葉よ』

難解ではない。でも観る側の態度を問われる『さらば、愛の言葉よ』

(C)2014 Alain Sarde – Wild Bunch 本作はゴダール初3Dというのが売り文句ですが、僕はひとまず「犬の映画」と言っておきたい。それくらい犬がいい。犬の立ち姿や動きがいい。 というか、ゴダールが撮りたいように撮ったら世界唯一の犬の映画ができました、という風に言うことはできるかもしれ...

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