(C)Filmes Do Tejo II, Eddie Saeta S.A., Les Films De l’Après-Midi,Mostra Internacional de Cinema 2010
『岸辺の旅』でも書いたが、僕は死をどうしようもなく恐れ、同時に、いやそれゆえに”死”に並々ならぬ関心を抱く者である。
『アンジェリカの微笑み』はそんな僕に見事に応えてくれた作品だ。
衝動的にパンフレットを購入して熟読した。特にマノエル・ド・オリベイラ監督へのインタビュー記事は何度も読み返した。
本作を撮り上げたのはオリベイラが既に100歳を超えた時。
なので本人曰く「私は人生について少しは知っている」と。しかし同時に「死については何も知らない。一度も試したことがないからね。誰でもそうだが。つまり死は謎であり、我々は何も知らないんだよ」
ーカッコ内はパンフレットより抜粋
『アンジェリカの微笑み』は、画面に映りこんでいるものがいちいちみずみずしくて驚かされる。それは生の喜び。しかし生は常に苦しみを伴っている。リカルド・トレパ演ずる主人公がセファルディ(ポルトガルやスペインのユダヤ人)であることがそれを象徴的に物語っている。
そんな生に対し、死は人間に解放をもたらすものであることをこの作品は語っているように見える。少なくとも僕にはそう見えた。
そうか。今まで生と死は等価だと思おうとしてたけど、生と死は次元が違うものなのだと思い直した。
生は言うまでもなく素晴らしい。僕が現実を”見れていること”。いや、より正確に言えば現実が僕の目に映りこんでくることが本当に感動的だ。映画を観ることは僕にそのことを常に感知させてくれる。
しかし、その生と隣り合わせにある死。一度足を踏み入れたら二度と戻ることのできない”死”は、それはそれで受け入れるべき世界なのかもしれない。
ま、いずれ必ず死ぬのだが。
『アンジェリカの微笑み』
監督:マノエル・ド・オリベイラ
出演:リカルド・トレパ、ピラール・ロペス・デ・アジャラ
製作年:2010年
製作国:ポルトガル、スペイン、フランス、ブラジル
上映時間:97分
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