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青春

すがりつけ!あがけ!駆け抜けろ!『移動映画館』

すがりつけ!あがけ!駆け抜けろ!『移動映画館』

かつてインド中に存在した移動映画館。 時は過ぎ、経済発展と技術革新によって没落産業となり、現在はただマハーラーシュトラ州に48館あるに過ぎない。しかし、そこで生きる人々の生き様を描く『移動映画館』は、関わる人々のギラギラとした生き様を活写する。 短髪でガタイのいい男勝りのチャンディ姉さんと弟のバビヤは、巡礼祭に設置され...

痛すぎる女の行動に共感できますか?『緑の光線』

痛すぎる女の行動に共感できますか?『緑の光線』

「フランス女は気が強い」フランスをよく知る人がそう言っていた。そしてその人はこうも言った、「いい大人になっても内気で人見知りな態度はフランスでは恥ずべきことだ。しかし、この『緑の光線』の主人公はめちゃめちゃ内気でうじうじした女である。」その言葉を聞いて、これは私こそ観なければならない映画だと思った。というのも、物心がつ...

避暑地にて。揺れる波紋『ほとりの朔子』

避暑地にて。揺れる波紋『ほとりの朔子』

(C)sakuko film partners 「海辺を男の子と女の子が歩いている。ただそれだけで、スクリーンが息づき満たされるような、そんな映画を作りたい ~中略~ ただ人が歩き、話し、誰かとすれ違っていく。そのすれ違った後に残された景色に、何か見る者の記憶に触れるような余韻を残せればと思う」 これは脚本が完成する前...

享楽スパイラル『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』

享楽スパイラル『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』

(C)2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED. 本作に先立って『スラヴォイ・ジジェクの倒錯的映画ガイド2 倒錯的イデオロギー・ガイド』を観た。たまたまだが。 哲学者スラヴォイ・ジジェクが、数々の有名映画の一場面を引用しながら持論を展開(関係ないけど、スポーツ選手や芸能人...

胸キュンがなくても感動できる『君の名は。』

胸キュンがなくても感動できる『君の名は。』

(C)2016「君の名は。」製作委員会 ついに『君の名は。』を観た。10月にしてやっとだけど。既に観た人によると、『君の名は。』を上映する劇場は学生や20代の若いカップルで溢れているとのこと。色々な意味で”切なく”なるぞと脅しの文句まで投げかけられ、単身でぽっと映画館に乗り込むには勇気が出ず、ずっと躊躇していた。しかし...

青い時間。おしゃべり『レネットとミラベル/四つの冒険』

青い時間。おしゃべり『レネットとミラベル/四つの冒険』

©Les Films du Losange/C.E.R 仙台にある実家から歩いて15分のところに「フォーラム仙台」という映画館がある。 本作は、帰省している折にその映画館に部屋着のままふらっと観に行ったものであるが、そういう感じで観るのに相応しい「軽やかさ」を身にまとった作品だ。 『緑の光線』を撮り終えた直後、編集もそ...

胸キュンの回転寿司へようこそ『君の名は。』

胸キュンの回転寿司へようこそ『君の名は。』

(C)2016「君の名は。」製作委員会 映画の観方として。 私は原則的に、映画というものに「胸キュン」を求めない。なので映画を鑑賞中に胸キュンが始まったら、感受性のスイッチを切って無心になるか、目をつぶって視覚的に胸キュンを排除し、胸キュンの影響を受けないようこれ努める。 実のところ、多くの映画において胸キュンは作品を...

暗い部屋と一人の女優に見るパーソナルな時空『無伴奏』

暗い部屋と一人の女優に見るパーソナルな時空『無伴奏』

(C)2015 「無伴奏」製作委員会 ただ暗くて見づらい画面と、コントラストを抑えて薄暗さを積極的に表現しようとする違い。 すなわちローキーで徹底的に行こうという意思を感じる『無伴奏』は、「あの時代」の空気感をよく表している作品だ。 といっても僕は1967年生まれなので、1970年代初頭に急速に収束した学生運動の時代の...

大学という私の脳内の幻想の楽園『カミュなんて知らない』

大学という私の脳内の幻想の楽園『カミュなんて知らない』

冒頭の長回しが印象的な名作といえば、『黒い罠』『ザ・プレイヤー』『ハロウィン』などが挙げられると思うが、『カミュなんて知らない』の導入はそれらに匹敵する出来栄えである。 手持ちカメラが舞台となる立教大学のキャンパスを流麗に動き回った後、クレーンに据え付けられて学生たちのダンスをぶら~んぶら~んと浮遊しながら映しとる。こ...

完全に埋もれてる気がするけどまちがいなく傑作「めぞん一刻」

完全に埋もれてる気がするけどまちがいなく傑作「めぞん一刻」

果たして実写版映画「めぞん一刻」をどれほどの人が意識化しているだろうか? かくいう僕もこの作品の映像の一端を偶然見かけて「おお!」と思い、DISCASで取り寄せて鑑賞した次第。 「めぞん一刻」は、まさに「映画そのもの」だ。 映画のかぐわしい香りがいっぱいに詰まっていて、観ているだけで(むろん映画は観るものだが)幸せにな...

トランシネマ第2回上映会記念『シンプル・シモン』合評

トランシネマ第2回上映会記念『シンプル・シモン』合評

トランシネマが仙台で開催する、第2回目の上映会の日が近づいてきました! 今回は、上映会の開催と「トランシネマWEB」の開設をダブルで記念して、上映会で上映する「シンプル・シモン」をレビュアー全員で合評しました。 レビュアーによるさまざまな視点によって「シンプル・シモン」の魅力があらゆる角度から語られています。 どうぞ楽...

生きるということの歌『トイレのピエタ』

生きるということの歌『トイレのピエタ』

(C)2015「トイレのピエタ」製作委員会 古びた木造アパートの、狭いトイレの一室で、壁に画を描く主人公。ひたすらハケを振りまわす。塗料を何度も塗っていく。右へ左へ天井へ。既に塗られたところにも、重ねて重ねて塗っていく。そんな作業を見ていると、何故だか感動してしまう。大げさでいて、恥ずかしく、突拍子もない考えだけど、ま...

「浮遊感」と「停滞感」『ネネットとボニ』

「浮遊感」と「停滞感」『ネネットとボニ』

なんとなく、気持ちよく、漂っている。『ネネットとボニ』はそんな映画だった。 それは「浮遊感」とでもいおうか。冒頭、少女がプールに浮かんで漂うシーンが印象に残る。真っ赤な服を着たまま水に浸っている少女。その違和感を気にする風もなく、気ままに、たおやかに、虚空を見つめる。 根拠のない心地よさ。それは10代後半の、子供と大人...

死んでたまるか『ソレダケ/that’s it』

死んでたまるか『ソレダケ/that’s it』

bloodthirsty butchers (ブッチャーズ)を初めて見たのは、確か下北沢ClubQueだったか。 ナンバーガールとのツーマンだったが、ある種伝説的なその二つのバントは、もう随分と人気で、ライブハウスの中は身動きが取れないほどだった。 しかし、そんな観客の熱狂や歓喜はどこ吹く風で、当の本人たちは、顔をしか...

終わらない夏休み『セリーヌとジュリーは舟でゆく』

終わらない夏休み『セリーヌとジュリーは舟でゆく』

パリの公園のベンチで、魔術の本を読みながら足で魔法陣なぞを描いているジュリー。 そこに現れ、何やら怪しげな素振りを見せつつ身につけた小物を落として走り去るセリーヌ。 それをジュリーが追いかけ、「不思議の国のアリス」的逃走劇の始まり始まり~ しかしジュリーはなぜセリーヌを追いかけるのでしょうか? モンマルトルの丘のケーブ...

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