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「とら猫 aka BadCats」が選ぶ2017年上半期ベスト5

2017年の前半は息をするだけで終わってしまった気がする。とても悲しい。
映画もあまり観れなかったが、そんな中でも印象に残った上半期のベスト5を選んでみもした。否、みました。

第5位『ファウンド』
(監督:スコット・シャーマー)
@ヒューマントラスト渋谷
ホラーマニアで殺人鬼の兄と、いじめられっ子の弟が繰り広げる、陰惨で、いびつで、血まみれで、心の片隅にしまっておきたい思春期の暗部を容赦なく暴いた、「ホラー映画は犯罪の温床」厨が観たら嬉々として槍玉に上げそうな、救いはないけど後ろめたい共感は得られる青春ホラードラマ。兄の部屋のクローゼットをこっそり覗くと生首が見つかる、という導入部が秀逸。人間の歪んだ本質を描くには、わずか8000ドルの予算で十分だ。

第4位『スプリット』
(監督:M・ナイト・シャマラン)
@ららぽーと横浜
『ヴィジット』で復活の狼煙を上げたシャマランが「どんでん返し王」のトラウマから解き放たれ、再びやりたい放題やらかした、もはや凡人の評価を受けつけない映画というかシャマランアート。近いものを挙げるなら、離島で唐突に遭遇するインスタレーション、オノ・ヨーコの悲鳴、長渕剛のアレンジ版「乾杯」。『ヴィジット』の魔法が解けていないのか、世間では意外と高評価のようだが、相手はあのシャマランだ。『シックスセンス』の成功のあとに『アンブレイカブル』を撮った男だ。くしくも次回作はその『アンブレイカブル』の完全続編というから推して知るべし。本作を観たあとで心がほんのり温かくなったら、あなたは紛れもなくシャマラニスト。どんどんやれ。

第3位『哭声/コクソン』
(監督:ナ・ホンジン)
@キネカ大森
予想のつかない展開とはこのことか。つか、予想なんてつくか。見知らぬ隣人、殺人鬼、ゾンビ、悪霊、除霊等々、それぞれが香ばしいノリを放つエピソードを強引につなぎ合わせ、しかしながら最後まで空中分解することなく美しく着地してみせる、かつて広島に在籍したホームラン王ランスのごとく、おびただしい数の三振に目が向かないほど、豪快なホームランだけをかっ飛ばし続ける韓流パワフルエンタテイメント。これだけの奇跡を可能にした“つなぎ”役が、國村隼であることは言うまでもない。

第2位『ムーンライト』
(監督:バリー・ジェンキンス)
@ららぽーと横浜
なんといってもラスト近く、主人公が薄汚れたダイナーの薄汚れたソファ席でがっつく、ワンプレートディナーを挟んでの対話に尽きる。なぜ彼らはスプーンを逆手に持つのか。なぜ彼らは、一緒に載せたら互いに汁が混ざり合ってぐじゅぐじゅになってしまうことは自明の理なのに、複数の料理をワンプレートに集約させてしまうのか。そしてそんな料理がシェフのおススメであってよいのか。よいのである。だって観てたら食べたくなるし。それが文化だ。それが愛だ。それが自由だ。主人公の各時代を別々の役者が演じているのに、シームレスに目顔でつないでみせる魔法に酔うべし。

第1位『ローガン』
(監督:ジェームズ・マンゴールド)
@ららぽーと横浜
誰もが避けられない老いの現実を、ハードなエンタメを挟みながら大画面で体験させられる、マーヴェル唯一の「リアル老後ディストピアムービー」。動かぬ肉体を危険な薬品で奮い立たせ、次世代のために盾となるウルヴァリンの姿を見ていると、自分はどういった最期を迎えるべきなのか嫌でも考えさせられる。ヒーロー映画なのに。おまけにローガンは痴呆を患う元上司、発作が起きれば大量虐殺誘発というプロフェッサーの面倒までも見なければならない。こんな爆弾を抱えながら、自分の死とも向き合わなければならないローガンに底なしの悲壮感が漂うのはむしろ当然。やはり老後の準備はしておくべきだ。そんなことをあらためて痛感させられる。ヒーロー映画なのに。

次点:『メッセージ』(監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ)輪っか文字のアイデアが秀逸。『ドント・ブリーズ』(監督:フェデ・アルバレス)音ではなく、構図と演技でしっかり怖がらせる。『愚行録』(監督:石川慶)妻夫木くんと満島ひかりが良い。

(c)Marvel Entertainment, TSG Entertainment, Twentieth Century Fox Film Corporation

 

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とら猫 aka BadCats
メジャー系からマイナー系まで幅広いジャンルの映画をこよなく愛する、猫。本サイトでは特にホラー映画の地位向上を旗印に、ニンゲンとの長い共存生活の末にマスターした秘技・肉球タイピングを駆使してレビューをしたためる。商業主義の荒波に斜め後ろから立ち向かう、草の根系インディー映画レーベル“BadCats”(第一弾『私はゴースト』)主宰。twitter@badcatsmovie

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