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酒を酌み交わしながらどうでもいいことをえんえん語り合う2人ないし3人、というどう考えてもおもしろくない画の連なりがおもしろくってしかたないのだから、もはやマジックとしか言いようがない。映画の奥深さにただただ驚嘆の86分だ。
そのコケットリーが魅力的でもありバカっぽくもあるミンジョン(イ・ユヨン)はお酒が大好き。
しかしそれを快く思わない彼氏(キム・ジュヒョク)と、お酒を飲む量は5杯までにするとかしないとか、その程度のつまらないけんかを経て別居することになる。
画家らしい彼氏(自宅はアトリエっぽい仕様だが絵を描いている素振りはまったくなし)は未練たらたら。
飲み歩いてはミンジョンの影を追って街を彷徨う。
一方ミンジョンは中年男たちと飲み歩く日々。
で、ここからがわけわかんないのだが、ミンジョンは酒を飲むたびに別人になりすますのである。
旧知の人から声をかけられても、「あなた誰でしたっけ?」「私はそのミンジョンとやらではないのですが」ってな調子なのだ。
どこからどう見ても本人なのに…
同じ街の中で完結している話なので、いつかバレるでしょうと思いながら観ていると、案の定ミンジョンのお相手同氏が酒場で鉢合わせるという場面もある。あるにはあるんだが、映画はびっくりするような素っ気なさでトラブルを回避。なんじゃそら!?
…ってこのへんもいつものホン・サンスかな。
その行動だけを追っていくと、多量のアルコール摂取によって頭が朦朧としてほとんど病気の域に達しているとも見えるミンジョン。
が、不思議とそうした印象に引っ張られることはなくて、酩酊している人たちってバカだけど愛らしいよな~と、始終酩酊している自分を思わず自己肯定したくなるような、そんな気持ちで映画の世界に浸ってしまった。いわゆる癒し効果ですかね?僕にとっては。
見事なまでにいつものホン・サンス節が炸裂していて、パッと見の印象はあまりに見なれた、しかし終映後の印象は今まで味わったことがないような新鮮さ。
最後も狐につままれたような、しかし妙に納得って感じの終わり方で、いずれ国内で配給されることがわかっていながらわざわざ東京国際映画祭に足を運んでよかったと思わせる余韻を存分に堪能したのである。
※その後国内配給は行われていない(2017年5月19日現在)
『あなた自身とあなたのこと』
監督:ホン・サンス
出演:イ・ユヨン、キム・ジュヒョク
製作年:2016年
製作国:韓国
上映時間:86分


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