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青春

届かぬ笑顔『ワイルドツアー』

届かぬ笑顔『ワイルドツアー』

c)Yamaguchi Center for Arts and Media

2月の山口。冒頭の断続する風景ショットからまだ厳しい寒さの残る気配が感じられる。

山口情報芸術センター(YCAM)にて、採取した植物のDNAを解析して植物図鑑を作るというワークショップに参加する中学生たち。ファシリテーターを務める大学1年生のうめちゃんは中学3年生の男子2人と連れ立って足元がぬかるむ森に入る。うめちゃんの殺人的に美しい笑顔は、性の目覚めの境にいる中3男子の固い殻にヒビを穿つかのようだ。

女の子4人組はガヤガヤと山を登る。どうやら課題に真面目に取り組んでいるのは1人だけで、残りの子らはとりとめのないお喋りに興じている。1人がふいに「帰る」と言って下山したかと思えば、山頂付近でういっすとか何とか軽口たたいて合流してるし、わけわからん。が、彼女らのあふれる生命力が画面からほとばしっている。ファシリテーターの大学生ザキヤマは翻弄されっぱなしだが。

中3二人組の揺れ動く気持ちを無意識的に察知したのかどうかわからないが、うめちゃんはザキヤマに復縁の告白をしてみたりして(フラれるけど)。

中3二人組のうち、洗練され大人びた印象のシュンは、同級生の女子に告白されたりする。まだあどけなさの残るタケは、そんなシュンからうめちゃんに対する気持ちを打ち明けられる。高校生になったら告白すると語るシュン。タケはすかさずうめちゃんに告白する。ま、はっきり言って抜け駆けなんだが、それまでに見せなかったタケの真剣かつどこかセクシャルな表情に、固い性の殻を破って子供から思春期の少年に脱皮した姿を見て取れた気がして、頼もしいような気恥ずかしいような。

季節は春になった。
シュンは高校のバスケ部のジャージに、タケはバンドマン風情の衣装に、それぞれ身を包んでいる。一応ひとつ上のステージに立ったわけだ。
が、うめちゃんはアメリカに行ってしまった。彼女が撮影するアメリカの人々や風景の映像から、大学生の彼女の成長は少年たちのそれよりさらに早く、さらに広い世界へ飛び立とうとしているように感じられた。
少年たちは彼女に追いつくことができない。無力感に苛まれただろうか?それでも花咲き乱れる生命の季節は容赦なく巡ってくるのだ。

『ワイルドツアー』
監督:三宅唱
出演:伊藤帆乃花(うめちゃん)、安光隆太郎(シュン)、栗林大輔(タケ)
製作年:2018年
製作国:日本
上映時間:67分

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館長
館長
夢は映画館!と人前で言うようになってから20年以上が過ぎました。 時間が経つのは早いものです。 2014年にこのサイトを立ち上げ、2015年から仙台で上映会を開催し始め、2018年からは東京でも上映会を始めました。映画関連のイベントやワークショップにもあちこち顔を出してますが、相変わらず映画館ができる気配はありません。ひとまず本サイトのレビュー、もっと一所懸命書きます。フォローよろしくお願いします。
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