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ヒューマン

力あると思います『タリーと私の秘密の時間』

力あると思います『タリーと私の秘密の時間』

(C)2017 TULLY PRODUCTIONS.LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
『JUNO/ジュノ』『マイレージ、マイライフ』の監督の作品です。3人の子育てで鬱気味になった女性が兄のすすめで家に頼んだ、「ナイトシッター」、夜に子供の面倒を見てくれるベビーシッター、との出会いから生活が変化していく話です。このシッターは主人公の女性より若い20代の女性です。主演は『モンスター』『マッドマックス 怒りのデスロード』など超個性的な役が印象深いシャーリーズ・セロン、ジェイソン・ライトマン監督や脚本家や撮影監督とは『ヤング≒アダルト』以来の再タッグであり、役作りのため体重を増やしたことでも話題になってます。
女性の人生の話なので、特に歳を重ねるという事実が女性の人生や認識、思考に与える影響など、それがいったいどういうモノなのか、国や人種や環境で違いはないのか、同性である女性はどう思うのかなど考えながら、詰まるところ男性としては、一歩引いた感じで見ていました。ダンナさんは一見よくやっているようでも、奥さんの苦境を助けるまでにはいたらずで、男ってこんなに役に立てないのかとも思えますが、夫に期待してないからか夫婦仲が不仲になることはありません。
全体で95分というほど良い長さで、サクサク話が進むかと言えばそうでもなく、時間をかけるところはかけるので、1本調子でなくメリハリがあります。ナレーションや台詞でその話の主題を語ってしまうような日本でしばしばあるドラマと違い、展開や伏線や映像など様々な要素で観客に伝えようとしているので、想像力が働かされて楽しく思えます。何より主人公の女性の目線で全てが語られる。このシンプルさで話がどう紆余曲折しても転んでも、芯が1本通っているように理解が深まっていきます。いつしか主人公の彼女の行動を時には微笑ましく、時にはヒヤヒヤしながら、ドラマの流れに感情を委ねながら見ていました。ラストに近づいて行く時の展開はとても興味深いです。目線のしっかりした作品は良いですね。ある意味明白でわかりやすく、セリフや言葉でそのまま伝える以上に思いとかが伝わってくる感じがします。邦題は「本当の自分探し」的な作品の趣きで間違ってはいないのですが、原題は”TULLY”。配給側が、例えば『TULLY/タリー』だとタリーズコーヒー(TULLY’S COFFE)と間違えられると思ったかどうか別として、私はこのくらいシンプルな方がこの作品の力を表しているように思いました。

監督:ジェイソン・ライトマン
製作:メイソン・ノビック
製作総指揮:ジェイソン・クロス
脚本:ディアブロ・コーディ
撮影:エリック・スティールバーグ
原題:Tully
製作年:2018年
製作国:アメリカ
配給:キノフィルムズ
キャスト:シャーリーズ・セロン、マッケンジー・デイビス、マーク・デュプラス

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1966年生名古屋出身、東京在住。会社員。映画好きが高じてNCWディストリビューター(配給・宣伝)コース、上映者養成講座、シネマ・キャンプ、UPLINK「未来の映画館をつくるワークショップ」等受講。青山学院ワークショップデザイナー育成プログラム修了。転勤で暮らした札幌に映画館を作りたいという野望あり。
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