
(c)Plasir/Film Bandit
冒頭、花のクローズアップ写真が次々に映し出される。
とある女から写真家が撮影の依頼を受ける。「何も訊かないこと」「ネガをもらうこと」を条件に。
写真家は、女の車で山梨県内の山荘に連れて行かれる。
女は言う。「ここを撮ってください」。下着を脱いだ彼女は自らの股間を指さしている。この唐突かつ奇妙な依頼の理由は、写真家はもとよりわれわれ観客にも説明されることはない。この謎の撮影は毎週のように繰り返される。ただ女性器を撮影するだけ。性行為は介在しない。
いったい何が始まってしまったのか?
撮影を終えて帰宅した写真家に、妊娠している恋人が仕事状況を尋ねる。「ただのブツ撮りだ」と答える写真家。さすがに、見知らぬ女の性器を撮っていたなどとは言えぬだろう。が、本作のラストで女性器のクローズアップ写真が次々と映し出されるが(冒頭の花(=植物の性器)の写真と対になっている)、それらはまるで静物画(スティルライフ)であった。静物画としての女性器を撮影していたのなら、ブツ撮りはあながち嘘ではない。
写真家は湖面に耳を押し当てる。まるで妊婦のお腹の中を探ろうとするかのように。でも湖は深く、内部はうかがいしれない。
写真家の目線を通して、わたしは女性器と向き合い、さらにその奥へ、深淵へと意識が向かう。わたしも女性器から生まれてきたことが思い起こされる(もちろん産道を通過してきた記憶があるわけではない)。
女には臨終間近の母親がいる。表情はなく、目に光はない。寝台に身を横たえて全く動かぬ彼女の性器を、写真家は凝視する。やがて母親の骨は湖に散布される。
赤ちゃんの分娩シーンがこの後に続く。
車での移動中にむずかる赤ちゃんのおしめを取り替えようと股間を覗きこむ写真家の顔に、勢いよくおしっこが引っかけられる。赤ちゃんは女の子である。やがて車は、子宮を思わせるトンネルへと奥深く入ってゆく。
女性器の探求を経て、死と誕生、すなわち命のサイクルを見た思いである。
『スティルライフオブメモリーズ』
監督:矢崎仁司
出演:安藤政信、永夏子、松田リマ
製作年:2018年
製作国:日本
上映時間:107分


最新記事 by 館長 (全て見る)
- 2024年劇場公開映画ベスト30 - 2024年12月31日
- 2023年劇場公開作ベスト17 - 2023年12月31日
- 2022年新作公開映画ベスト10 - 2022年12月29日