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仙台に未来の映画館を創る『館長日記』と『シネマレビュー』

ヒューマン

家族、めんどくさっ!『たかが世界の終わり』

(C)Shayne Laverdiere, Sons of Manual

売れっ子作家のルイは、死期が近いことを家族に伝えるため12年ぶりに帰郷する。

母は興奮を抑えきれず、手の込んだ料理で息子を迎える準備に余念がない。
妹は、別れた時はまだ幼くルイをよく覚えていない。ルイのことが載った記事を部屋中に貼り出したりして想像上の兄に対する憧れにはちきれそうだ。
長兄はいきなり不穏な空気を醸し出してのお出迎え。

死期の迫った息子と家族の和解を描く話なんじゃないかと勝手に思っていた。今はいがみ合ってるけど息子の告白をもって家族が愛を確かめ合い、大感動!みたいな。
だけどなかなかそうは筋が運ばない。そんな生易しい話ではなかったのだ。

とりわけ長兄の当たりがキツイ。
ルイがゲイであることに対するわだかまりが拭えないからなのか。自分以外の家族に歓迎されるルイの存在が目障りで仕方がないからなのか。
にしてもだ。キレすぎである。

全てをぶち壊す長兄の存在が許し難い。
弟の帰郷をなぜ受容できないのか?
残り僅かな日々をうわべだけでも優しくやり過ごすことは出来ないのか?(まあ、映画の中では弟の帰郷の訳を知らないのだけど)
母や妹の歓びを踏みにじる権利があなたにはあるのか?

キレた長兄に反応してキレ返す母と妹。
家族仲があまりよくない環境に育った人は、激しい家族喧嘩を終始見せつけられる本作に対しかなりシンドイ思いに駆られるのではないだろうか。他ならぬ僕がそうだったのだが。

唯一の部外者として場にいる長兄の妻の立ち位置が興味深い。
彼女だけがルイに率直な視線を向け、ルイがただふらっと帰って来たわけではないことを直感する。
が、そこまでだ。それ以上は踏み込まない。他人だから。

家族ってめんどくさいんである。
親密であるぶん相手に対する配慮に欠け、お互いを傷つけ合うことも辞さない。
疎ましくてイヤだから離れようと思ってもそうは問屋が卸さない。12年のブランクがあっても自らの死期を告げに舞い戻ったりするルイのように。
もちろんすべての家族がそういうわけではないだろう。
が、『たかが世界の終わり』は、僕にとっての家族のリアルを見せてもらえ、キツイけど深く納得のいく、ある種の癒しさえ得られた作品なのである。

『たかが世界の終わり』
監督:グザヴィエ・ドラン
出演:ギャスパー・ウリエル、レア・セドゥ、マリオン・コティヤール、ヴァンサン・カッセル、ナタリー・バイ
製作年:2016年
製作国:カナダ、フランス
上映時間:99分

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館長
館長
仙台で映画館を開業して、生まれ故郷の発展に貢献したいと思っている49歳です。 49年間、経済的にも精神的にも映画に救われ続けてきたという思いがあります。 ミニシアターを作ることで、ささやかながら映画に恩返ししたいと思っています…といっても何か秘策があるわけではまるでなし。 今できることは、とにかく思いを発信し続けていくだけです!

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