
(c) Dharma Productions, Fox Star Studios
なぜ赤の他人同士が共感できるのかと言えば。
それは規模の大小こそあれ、多くの場合、誰しも似たような経験や境遇に晒されたことがあるからだ。そして人類の大半が共通して保有しているものとは何か。
家族である。
孤児として生まれ育ったわけでもない限り、たいていの人間はこの「家族」というやつを持っている。
『カプール家の家族写真』で描かれるのは、そうした家族の物語。本作はインド映画なのだが、こうした家族の物語をたしなむ上で、国境というものは何の障害にもならない。言葉や、気候や、環境は違っても、家族という存在の意味するところ――たとえどんなに疎ましかろうとも、他人のように切り捨てることはできず、永遠にその繋がりから逃れることのできない者たち、という原則は変わらないからである。
だからこそ、本作は、人種や肌の色を問わない汎用的な「人間」としての心に訴えかけることに成功している。
大切な人の死。意外な事実の発覚。兄弟間でのジレンマ等々。
本作で描かれる「家族間でのハプニング」はどれも、それぞれショッキングではあるが、とりたてて珍しいことではない。鑑賞中、どこかで必ず、自分自身を映画の中の登場人物と置き換えられるシーンが登場するはずだ。そしてふと、同じ空の下にある故郷に思いを馳せてしまうことだろう。
物語にはオリジナリティを求められることもあるが、そもそも普遍的であるためには、独創的である必要などない。逆に凡庸で、ありがちだからこそ、老若男女、世代を問わずに感銘を受け、心を打たれたりもするわけだ。最近なら『君の名は。』なんかも、そういった“凡庸な普遍性”によって大量動員に成功した映画のひとつだろう。
詰まるところ、日常など陳腐な出来事の積み重ねでしかない。もちろん、ドラマティックな事件も起きたりはするが、それはあくまでも例外。非日常の枠内で語られるべきことなのだ。そして日常に国境はない。地球がぐるぐる回り続ける限り、いつもどこかで日常は起きているのである。
歌って踊らないインド映画だが、良いものは良い。特に爺ちゃん、サイコーっす。
『カプール家の家族写真』
監督:シャクン・バトラ
出演:リシ・カプール、シッダールト・マルホートラ、ファワード・カーン
製作年:2016年
製作国:インド
上映時間:132分


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