2020年は「劇場が閉まる」というおよそ考えもしなかった事態が現実化しました。その後ぶじ興行が再開されましたが、米国制作の大作をはじめ新作の供給が大幅に減ったため、例年より鑑賞本数はぐっと落ちましたが、それでもたくさんのお気に入りの映画と出会うことができました。
映画に順位をつけることは無意味ですが、あーでもないこーでもないとさんざ悩んで順位をつけることは楽しいですし、何より劇場で映画を観ることができる幸福を噛みしめています。
それでは2020年新作公開映画ベスト10いってみよう!
第1位『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
(グレタ・ガーウィグ) 2019年:アメリカ
2018年に同監督の「レディ・バード」を1位に選んでますが、2作目にして既に風格すら漂っている感じ。語り口が巧みで、女性が女性を語る物語が私みたいなおじさんにもすーっと入ってくるっていうのは並の手腕じゃないと思います。
第2位『ジオラマボーイ・パノラマガール』
(瀬田なつき) 2020年:日本
何でしょうこの新鮮な感覚。お芝居がかっているにも関わらずナチュラルに切り取られた人物たちの佇まいと息遣い。等身大の物語なのに末広がりに感知される世界のスケール感。エンドロールも秀逸で、オリジナル曲に吹き込まれた主演の少女たちのユニゾンに鳥肌が立ちました。
第3位『ウルフウォーカー』
(トム・ムーア) 2020年:アイルランド、ルクセンブルク
トム・ムーアケルト三部作の大トリ。独特の夢幻感を保ちつつ活劇度がぐんと増しておりいっこうに眠くならないのがちょっと寂しいなと思いつつ、ラストの大円団ではキッチリ泣かされました。円環のイメージと四角のイメージの対比などデザインの作りこみが凄い!
第4位『ウ゛ィタリナ』
(ペドロ・コスタ) 2019年:ポルトガル
主演のヴィタリナさんをとらえたショットがいちいちカッコいい。ヨーロッパの西の果ての薄暗いスラム街の中でこんな驚くべき映画が撮られていて、それを日本で観れるということにとてつもない幸福を感じます。
第5位『ソン・ランの響き』
(レオン・レ) 2018年:ベトナム
出だしのナレーションで傑作認定。画をしっかり見せ、かつ映像の積み重ねでもって映画の中で起こっていることが心の中にすーっと入ってくる、映画の文法に長けた逸品です。字幕とストーリーを追わずとも満足できる作品との出会いはそうそうあることではありません。ずっと大事しにたい1本。
第6位『燃ゆる女の肖像』
(セリーヌ・シアマ) 2019年:フランス
クレジットタイトルで映し出された白い油絵のキャンバスを見てるだけで傑作の予感がしました。メインの役者は少数精鋭。一見地味に見えて登場人物たちの心のマグマが見えないところで燃え上がってる感じ。集中が途切れることなくあっという間に終幕を迎えました…と思わせる地点からさらにラストの盛り上がりが3段階くらいあってクラクラきました。
第7位『ペイン・アンド・グローリー』
(ペドロ・アルモドバル) 2019年:スペイン
腰の据わったヒューマン・ドラマ。アントニオ・バンデラス演じるアルモドバルの分身と思しき主人公の生き様をまるまる追体験したような充実感を味わいました。なおかつ画面の色づかいが美しく視覚的にも大いに楽しませてもらいました。
第8位『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』
(キャシー・ヤン) 2020年:アメリカ
キレまくってて圧倒されつつカラフルかつチャーミングで、決してすさんだ方向にいかないのが素敵。コロナで映画館が閉まる直前の時期に観たため、終映後の劇場周辺はさながらゴーストタウン。終末感がひしひしと押し寄せてきたのを憶えています。
第9位『ブックスマート』
(オリウ゛ィア・ワイルド) 2019年:アメリカ
笑い転げながら感動が押し寄せてくるという多幸感にあふれた愛すべき作品。善い子しか出てこないというのが新鮮。
第10位『窮鼠はチーズの夢を見る』
(行定勲) 2019年:日本
視線の交錯の演出のしつこさといったら!恋愛に枯れきったわたしじしんが恋愛の現場に立ち会わされているような錯覚に陥る不覚。映画にしてやられたという心地よい敗北感。
次点の5本
泣く泣く落とした5本を未練たらしく載せちゃいます。監督の面子的に凄い作品ばかりでベスト10から外しちゃっていいのかしら?と思いつつ…
『リチャード・ジュエル』(クリント・イーストウッド)2019年:アメリカ
『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』(ウディ・アレン)2019年:アメリカ
『魔女がいっぱい』(ロバート・ゼメキス) 2020年:アメリカ
『冬時間のパリ』(オリウ゛ィエ・アサイヤス)2018年:フランス
『マティアス&マキシム』(グザウ゛ィエ・ドラン) 2019年:カナダ
なお、年明け後に旧作のベスト10および映画館以外の環境で観た映画のベスト10も発表したいと思います。それではみなさん(ってほとんど読んでいる方はいないと思いますが、そんなあなたに読んでいただけて嬉しい!)よいお年を!
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