
(C)2017 フジテレビジョン 東宝 FNS27社
一切見ていないTVドラマの続編を劇場で観ても楽しめるはずもないし、2006年に観た西谷弘監督の『県庁の星』を当時の僕はまったく楽しめなかったので通常なら当然パスするところなのだが、ついふらっと劇場に足を運んでしまったのは運命のイタズラというか、そもそもたかが映画、そんなに構えて観に行く(もしくは観に行かない)必要ないじゃん。
冒頭の紗和(上戸彩)の一人暮らしを描写する一連のシーンが素晴らしい。
前述したようにドラマを一切見ていないので、なぜそういう状況になっているのか背景が全然わからかいことが却って想像力を掻き立てる。いや、怪我の功名みたいな言い方をしているがそんな皮肉は全然言うつもりはなくて、編集に最大限気を遣った素晴らしい導入になっている。
紗和の自転車で走る様がいい。海岸をしゃかしゃかとせわしなく漕ぐその切羽詰った走りっぷりがいい。
彼女の性格やここまで生きてきた背景に(これまたTVを見ていたらわかったことなのかもしれないが)やはり想像力を掻き立てられる。
その走る自転車をクレーンを使って捉えたショット、ウィンドサーフィンをしている海からの目線のショットと冒頭の一連のショットがいちいちキマっており、これから始まる映画のトーンにキッチリチューニングできたため、あとは物語に身を任せるだけでよかった。
本作においてはホタルの光が重要な小道具になっているが、ラストシーンでのそのホタルの光を想起させるかのような踏切の光の演出にはかなりびっくりした。少し遠くに見えるぼやけて明滅する2つの光。紗和の心の動きとシンクロするかのようにその色が黄色から赤に変わるのを見てとった時、正直かなり心を持っていかれた。
映画とはとどのつまり「光」(と影)である。そのことに対する明確な自覚と繊細な感受性を見てとるという、幸福な「映画」との出会いであった。
『昼顔』
監督:西谷弘
出演:上戸彩、斎藤工、伊藤歩
製作年:2017年
製作国:日本
上映時間:125分


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