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ヒューマン

ダンス・ダンス・ダンス『山河ノスタルジア』

ダンス・ダンス・ダンス『山河ノスタルジア』


C)Bandai Visual, Bitters End, Office Kitano

僕は映画の中のダンスに過敏に反応してしまう傾向があり、ゆえに印象的なダンスシーンが3つも存在する『山河ノスタルジア』には相当心を揺さぶられた。

本作は、過去(1999年)・現在(2014年)・未来(2025年)と、時代で区切った3パートで構成される。

過去パートでは、女1人・男2人の三角関係が展開されるのだが、冒頭からいきなり心拍数が上がってしまう。度肝を抜かれるようなものすごくダサい集団ダンスシーンで幕を開けるのである。
時は1999年。舞台は中国の山西省・汾陽(フェンヤン)という田舎町。そういう時と場所を考慮してのリアリティのあるダサさなんだと自分を納得させようとするがうまくいかない。ダンスのエナジーに凌駕されて思考がうまく働かないのだ。
不安定だが気持ちよくて、僕は一発で『山河ノスタルジア』の虜になる。

背景に流れる黄河の巨大な流れや、あっちこっちでやたら打ち上げられる花火の爆音というおよそ非日常的な光景の中で繰り広げられる三角関係には、感情とか愛情を超えた力強い生命の営みすら感じてくるのだが、ここで第2のダンスシーン。
石畳のディスコ。ティーンと思しき女子2人組がヘッドバンキングで踊っているすぐ横で、浮浪者みたいなおじさんが変な踊りを踊っている。異質なものが平気で共存しているその空間から感じ取れるのは、ただただダンスの熱狂。ダンスとは本来生命の猥雑なパワーの放出だったのかと発見した気になる。

現在のパートでは、母と息子のつかの間の邂逅が胸を打つ。
が、突然脈絡なく女の目の前に飛行機が墜落してきたりして油断ならない。

未来のパートでは、息子がオーストラリアに移住している。
成長した息子は既に北京語を忘れている。そして母親ほどの年齢の離れた教師と恋に落ちる。この2人が初めて会った時からきっと結ばれるに違いないと予感するのだが、その予感どおりに2人が結ばれたことを示すヘリコプターのシーンで僕は放心状態になってしまい、息子が母の名である「タオ」と口にした時、太平洋を隔てた遥か彼方で麦穂餃子を作っている母がその声を聞いたような気がするシーンで、心の中で何かが弾け飛んでしまった。

本作にはもう1こ印象的な、そして決定的に重要なダンスシーンが存在する。
このシーンをどう受け止めるかで鑑賞者にとっての『山河ノスタルジア』の価値が決まるだろう。
あなたはどう受け止めましたか?そう共有したいような気もするし、誰とも共有したくないという気もする。
そんな感じの映画だ。

『山河ノスタルジア』
監督:ジャ・ジャンクー
出演:チャオ・タオ、ドン・ズージェン、シルビア・チャン
製作年:2015年
製作国:中国、日本、フランス
上映時間:125分

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館長
館長
仙台で映画館を開業して、生まれ故郷の発展に貢献したいと思っている50歳です。 50年間、経済的にも精神的にも映画に救われ続けてきたという思いがあります。 ミニシアターを作ることで、ささやかながら映画に恩返ししたいと思っています…といっても何か秘策があるわけではまるでなし。 今できることは、とにかく思いを発信し続けていくだけです!
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