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名は体を表すというが、邦題となると必ずしもそうではない。かつて激似のタイトルとは全くの別作。確かに「ニューヨークの大人になれないオトナたち」のイメージだし、原題”While We’re young”にも近いニュアンスだが、そもそも原題が全てを現わしておらず、スカしている。そういえば監督の前作は『フランシス・ハ』。これもスカしていた。
ベン・スティーラーとナオミ・ワッツが中年に差しかかった夫妻役で出演、夫は処女作以降、パッとしないドキュメンタリー監督、妻が大物ドキュメンタリー監督の娘でプロデューサーという話である。二人に子供はいない。そこに隠れ野心家で映画監督志望のアダム・ドライバーとアマンダ・セイフライドの若い夫妻が近づいてくる。丁度、同世代の友人夫妻に子供誕生で疎遠になり、若夫婦と親密なるが…という展開である。
実は ドキュメンタリー映画に関して示唆に富んだ作品である。しかし、まず鑑賞後は妻役のナオミ・ワッツを語らずにはいられない。とにかく素敵なのだ。元々綺麗さに加えて、年相応のチャーミングさが溢れている。夫は実直で、ドンキホーテみたいに不器用だが、様子を見守り傍にいる。妻は仕事のキャリアを着実に積んでいて順調。ただ、子作りについては自問自答を繰り返す。喧嘩もする、気持ちの行き所が無くなり「キーっ!」となればなったで、愛嬌たっぷり。実に魅力的なのだ。
ナオミ・ワッツの初見は『マルホランド・ドライヴ』(2001)だった。日本在住経験の賜物か『ザ・リング』シリーズ(2002・2005)にも出演。評判はともかく『キングコング』(2005)と『ダイアナ』(2013)でヒロインを務めたのは大胆さと度胸の良さの現れだ。ウディ・アレン監督の『恋のロンドン狂騒曲』(2010)にも出演、旬の役者を起用する監督のもと、コメディエンヌとして、充分に存在感を示した。
この物語は(たぶん)ナオミ・ワッツに宛書きされ彼女の演技力と容姿も含めた魅力が全開になるように仕組まれ、まんまと当たっている。「人間としては最低だけど、作品は面白いのよ」という意味の最も重要なセリフは彼女から発せられるのだ。
『ヤング・アダルト・ニューヨーク』
監督:ノア・バームバック
出演:ベン・スティラー、ナオミ・ワッツ、アダム・ドライバー、アマンダ・セイフライド
製作年:2014年
製作国:アメリカ
上映時間:97分
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