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ホラー

食わず嫌い克服への第一歩『サスペリア』

食わず嫌い克服への第一歩『サスペリア』

それまで一度も食べたことがないものを、外見や先入観から「まずい」と決めつけ、決して口にしないことを“食わず嫌い”と言うが、映画においても、特にホラーというジャンルはこの食わず嫌いの犠牲になる確率が抜きん出て高い(はず)。

一体何本のお勧め映画が、ただただ「ホラーだから」という理由だけでアウトオブ眼中の憂き目に遭ってきたかと思うと憐憫の涙を禁じ得ないのだが、食べ物の評価が和食や洋食といった枠組みで決まるわけではないのと同様、映画の魅力もジャンルで決まるわけではない。

そういった“ホラー食わず嫌い”な諸賢にぜひ一度食してもらいたいのが『サスペリア』だ。

鮮血が舞い、首がくくられ、おぞましい悲鳴がこだまする『サスペリア』は確かに恐怖映画なのだが、どうかまずは、えーやだー、ぐろいー、こわいー、とか言わずにこうした残酷描写の“盛りつけ方”に目を向けていただきたい。赤、青、緑の原色をことさら強調した鮮烈なビジュアルは、さながらカエルの串焼きに色とりどりのパプリカや毒キノコを盛り合せたかのよう。しかも、そうしたちょっぴり病的な料理が、呪術的なパフォーマンスと、荒々しく疾走するロックサウンドと共に供される。そんなお店があったら、行ってみたいとは思いませんか。

『サスペリア』は観るのではなく感じる映画だ。よって「ストーリーが破綻している」などと真顔で突っ込むのは無粋というもの。そもそもストーリーなんて概念が存在するのかも怪しい。ここはひとつ、寛大な心でもって監督ダリオ・アルジェントの創り上げる幻惑的なビジュアルとサウンドの渦にぐるぐると身をゆだね、その先にある眩暈を覚えるほどの快感をご賞味いただきたい。

『サスペリア』
監督:ダリオ・アルジェント
出演:ジェシカ・ハーパー、ウド・キアー
製作:1977年
製作国:イタリア
上映時間:99分

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とら猫 aka BadCats
メジャー系からマイナー系まで幅広いジャンルの映画をこよなく愛する、猫。本サイトでは特にホラー映画の地位向上を旗印に、ニンゲンとの長い共存生活の末にマスターした秘技・肉球タイピングを駆使してレビューをしたためる。商業主義の荒波に斜め後ろから立ち向かう、草の根系インディー映画レーベル“BadCats”(第一弾『私はゴースト』)主宰。twitter@badcatsmovie
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